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自動車税の仕訳のしかたは?勘定科目・按分方法・税制改正を解説

フリーランスや個人事業主が事業で自動車を使っている場合、自動車税を経費計上できるのをご存じでしょうか。ただし、その自動車をプライベート用としても使っている場合は会計処理上、注意すべき点があります。また、自動車税の負担を軽減できる特例などもあります。今回は、自動車税に関する基礎知識をはじめ、仕訳をする際の勘定科目や注意点などについて解説していきましょう。



自動車税とは?

自動車税とは、毎年4月1日時点で自動車を所有している人に対して課せられる税金(地方税)です。納付期限は原則として5月31日です。毎年5月上旬に「自動車税納税通知書兼納付書」が送られてくるので、この納付書を使って銀行や郵便局、コンビニなどで納税します。インターネットバンキングやクレジットカード払いに対応している都道府県もあります。

自動車税は4月から翌年3月までの1年分を一括で支払うのが原則ですが、4月1日以降に廃車にしたり自動車を譲渡したりした場合は、所有していた月に応じて自動車税が課税されます。

 

■自動車税の税額

自動車税は、自動車の種類によって税額が区分されています。普通乗用車と軽自動車の税額について解説します。

普通乗用車の自動車税の金額

自家用乗用車の自動車税の金額は、2019年10月の法改正によって引き下げられました。以下のとおり、自動車税の金額は排気量によって変わってきます。2019年9月30日以前に新規登録した自動車は引き下げ前の税額になり、2019年10月1日以降に新規登録した自動車は引き下げ後の税額になります。

排気量 引き下げ前の税率 引き下げ後の税率(引き下げ額)
1,000cc以下 29,500円 25,000円(▲4,500円)
1,000cc超1,500cc以下 34,500円 30,500円(▲4,000円)
1,500cc超2,000cc以下 39,500円 36,000円(▲3,500円)
2,000cc超2,500cc以下 45,000円 43,500円(▲1,500円)
2,500cc超3,000cc以下 51,000円 50,000円(▲1,000円)
3,000cc超3,500cc以下 58,000円 57,000円(▲1,000円)
3,500cc超4,000cc以下 66,500円 65,500円(▲1,000円)
4,000cc超4,500cc以下 76,500円 75,500円(▲1,000円)
4,500cc超6,000cc以下 88,000円 87,000円(▲1,000円)
6,000cc超 111,000円 110,000円(▲1,000円)

※参考:総務省|地方税制度|2019年10月1日、自動車の税が大きく変わります

 

軽自動車税の金額

軽自動車は排気量の区分はなく、乗用と貨物用に区分されています。それぞれがさらに自家用と営業用に区分され、税額が定められています。

2016年度から新制度がスタートしており、税額は以下のようになっています。2015年4月1日以後に最初の新規検査を受けた軽四輪車等(三輪以上の軽自動車)は新税率が適用されます。2015年3月31日までに最初の新規検査を受けた軽四輪車等は旧税率が適用され、税率の変更はありません。

車種区分 標準税率
旧税率 新税率
三輪 3,100円 3,900円
四輪以上 乗用 自家用 7,200円 10,800円
営業用 5,500円 6,900円
貨物用 自家用 4,000円 5,000円
営業用 3,000円 3,800円

※参考:総務省|地方税制度|平成28年度から軽自動車税の税率が変わります

■自動車税の「グリーン化特例」とは?

グリーン化特例とは、環境性能の優れた自動車の普及を促進するために設けられた制度のこと。燃費や排ガス性能に優れた自動車に対し、税金の負担を時限的に軽減(軽課)する特例措置です。特例の適用期間中に電気自動車など環境に優しいエコカーを購入した場合、購入した翌年の自動車税が軽減されます。

グリーン化特例(軽課)が適用されるのは、2023年3月31日までに購入した自動車です。ただし、2021年4月1日以降は適用を受けられる自動車が電気自動車、燃料電池自動車、天然ガス自動車などに限定され、排ガス性能に優れていてもガソリン車やLPG車は対象外となります。

グリーン化特例(軽課)は以下のように、自動車の種類や燃費基準達成度に応じて税金の軽減割合が変わってきます。たとえば、電気自動車であれば、自動車税は概ね75%軽減されます。その他の自動車は、国が定める燃費基準に対して達成度がどのくらいかによって軽減割合が変わります。

・グリーン化特例(軽課)による自家用の乗用車(登録車・軽自動車)に係る軽減割合

自動車の燃費性能等 2019年4月から2021年3月までの間に購入した場合 2021年4月から2023年3月までの間に購入した場合
登録車 軽自動車 登録車 軽自動車
電気自動車等(※1) 税率を概ね
75%軽減
税率を概ね
75%軽減
税率を概ね
75%軽減
税率を概ね
75%軽減
★★★★(※2)かつ2020年度燃費基準+30%達成車 税率を概ね
50%軽減
軽減なし 軽減なし
★★★★(※2)かつ2020年度燃費基準+10%達成車 税率を概ね
50%軽減
税率を概ね
25%軽減

※1:電気自動車等とは、登録車の場合は電気自動車、燃料電池自動車、天然ガス自動車(平成30年排出ガス規制適合(3.5t以下の自動車)又は平成21年排出ガス規制からNOx10%低減達成)、プラグインハイブリッド車及びクリーンディーゼル車(平成30年排出ガス規制適合又は平成21年排出ガス規制適合)であり、軽自動車の場合は電気軽自動車及び天然ガス軽自動車(平成30年排出ガス規制適合又は平成21年排出ガス規制からNOx10%低減達成)を指します。

※2:★★★★とは、平成30年排出ガス規制適合又は平成17年排出ガス基準75%以上低減達成車を指します。

※参考:総務省|地方税制度|2019年10月1日、自動車の税が大きく変わります

 

グリーン化特例(重課)について

上述したグリーン化特例は「軽課」と呼ばれるもので、自動車税の税率が軽減される制度でしたが、逆に自動車税の税率が重くなる「重課」もあります。

グリーン化特例(重課)の対象になるのは、新車新規登録などから一定期間を経過した自動車です。たとえば、ガソリン車やLPG車は13年超、ディーゼル車は11年超の自動車が重課の対象になります。グリーン化特例(重課)が適用になると、自動車税の税率が概ね15%上乗せされるため、中古車を購入する場合などは注意が必要です。



■自動車税の「環境性能割」とは?

2019年10月1日以降、自動車取得税が廃止され、環境性能割が導入されました。環境性能割とは、自動車の環境性能に応じて税率が決まる制度で、電気自動車など燃費が優れた自動車ほど税率が低くなります。なお、環境性能割は新車でも中古車でも要件を満たせば対象となります。

環境性能割の税率(乗用車の例)は以下のとおりです。

燃費性能等 税率
自家用 営業用
登録車 軽自動車
電気自動車等 非課税 非課税 非課税
★★★★かつ2020年度燃費基準+20%達成車
★★★★かつ2020年度燃費基準+10%達成車 1.0%
★★★★かつ2020年度燃費基準達成車 2.0% 1.0% 0.5%
★★★★かつ2015年度燃費基準+10%達成車 3.0% 2.0% 1.0%
上記以外 2.0%

※参考:総務省|地方税制度|2019年10月1日、自動車の税が大きく変わります

 

■自動車税の勘定科目と仕訳

事業用として自動車を使っている場合、自動車税を経費として処理することができます。ただし、その自動車をプライベートでも使っている場合は、支払った自動車税の全額を経費として計上することはできません。その場合は、「家事按分」という処理をおこなう必要があります。

自動車税の「家事按分」とは?

家事按分とは、ある支出の内訳として事業用とプライベート用が混在している場合、プライベートで使った部分の金額を除外して、事業用として使った金額だけを経費として計上することを言います。家事按分の代表例としては、自宅兼事務所における家賃や光熱費が挙げられます。自動車関連で言えば、自動車税のほかガソリン代や保険料なども家事按分の対象になります。

上述のとおり、事業用とプライベート用で同じ自動車を使っている場合は自動車税を家事按分して、事業用として使用している割合だけを経費として計上します。家事按分の方法は明確な基準があるわけではなく、合理的に説明できる方法であれば問題ありません。自動車税の場合は、走行距離や使用日数、使用時間などを基準にして家事按分をおこなうのが一般的です。2パターンの具体例で見ていきましょう。

 

▼走行距離を基準にして家事按分する場合

年間の走行距離が10,000kmで、そのうち8,000kmが事業用としての走行であれば、家事按分は「事業用:プライベート用 = 8:2」となり、経費計上できる割合は80%ということになります。支払った自動車税の金額が30,000円だとすると、30,000円 × 80% = 24,000円を経費計上します。

 

▼使用日数を基準にして家事按分する場合

平日は事業用として自動車を使い、休日はプライベートで自動車を使ったとします。年間休日が120日だとすると、家事按分は「事業用:プライベート用 = 245:120」となり、経費計上できる割合は約67%ということになります。支払った自動車税の金額が30,000円だとすると、30,000円 × 67% = 20,100円を経費計上します。

走行距離を基準にする場合も、使用日数や使用時間を基準にする場合も、妥当な家事按分をするためには記録を残しておく必要があります。以下のような項目を記した「運行記録表」をつけておくのがいいでしょう。

・利用日
・利用時間(出発時間・帰着時間)
・走行距離(走行メーターで確認)
・目的地・訪問先

運行記録表などの根拠がなく何となくの割合で家事按分をすると、税務調査が入ったときに不利になってしまいます。

 

自動車税の勘定科目は「租税公課」か「車両費」

自動車税の勘定科目として一般的に用いられるのは「租税公課」ですが、「車両費」という勘定科目を使っても問題はありません。「車両費」は、ガソリン代や保険料など自動車関連の費用をまとめて把握したい場合に使われるのが一般的です。

「租税公課」と「車両費」のどちらで仕訳をするかは、任意で決めて構いません。ただし、一度決めた勘定科目は継続して使用するのが会計処理の原則なので、後に変更するのは望ましくありません。最初に、どちらの勘定科目で仕訳をすべきかをよく検討するようにしましょう。

 

勘定科目「租税公課」を使った仕訳例

自動車税を「租税公課」として計上する場合の仕訳例を見ていきましょう。

▼①:事業用として使っている自動車の自動車税30,000円を現金で支払ったときの仕訳

借方勘定科目 貸方勘定科目
租税公課 30,000円 現金 30,000円

▼②:事業用として使っている自動車の自動車税30,000円を預金口座から支払ったときの仕訳

借方勘定科目 貸方勘定科目
租税公課 30,000円 当座預金 30,000円

▼③:事業用として使っている自動車の自動車税30,000円をクレジットカードで支払ったときの仕訳

・クレジットカードで支払いをした日

借方勘定科目 貸方勘定科目
租税公課 30,000円 未払金 30,000円
決済手数料 200円

・クレジットカードの引き落とし日

借方勘定科目 貸方勘定科目
未払金 30,000円 当座預金 30,000円

▼④:事業用の割合(家事按分)が80%の自動車の自動車税30,000円を預金口座から支払ったときの仕訳

借方勘定科目 貸方勘定科目
租税公課 24,000円 当座預金 30,000円
事業主貸 6,000円

「事業主貸」は、個人としての消費と事業用の経費を明確にするための勘定科目です。

勘定科目「車両費」を使った仕訳

自動車税を「車両費」として計上する場合の仕訳例は以下のとおりです。

▼⑤:事業用として使っている自動車の自動車税30,000円を現金で支払ったときの仕訳

借方勘定科目 貸方勘定科目
車両費 30,000 現金 30,000

 

■知っておきたい自動車税の注意点

自動車税に関して押さえておきたい注意点をご説明します。

自動車税の加算金・延滞金は経費計上できない

自動車税は基本的に経費として計上することが認められていますが、自動車税の加算金・延滞金に関しては経費計上することができません。自動車税の納付期限は毎年5月31日であり、これを過ぎると、滞納期間に応じて加算金・延滞金が追加で課税されます。加算金・延滞金は自らの過失によって発生する税金なので、当然のことながら経費計上は認められません。

ローン返済中の自動車は、利用者(購入者)が自動車税を支払う

自動車税は、毎年4月1日時点で自動車を所有している所有者(名義人)に課税されます。しかし、ローンで自動車を購入した場合は例外です。ローンで自動車を購入した場合、返済が終わるまではローン会社やディーラーに所有権が留保されます。ですが、この場合は自動車の利用者(購入者)が所有者とみなされるため、自動車税を納税するのも利用者(購入者)ということになります。

 

■まとめ~自動車税はきちんと経費計上して節税対策を!

自動車税を経費計上することは節税対策として重要です。業務とプライベートで兼用している自動車の場合、本記事でご説明したとおり家事按分が必要になります。走行距離や使用日数など、きちんと記録をつけて間違いのない会計処理を心がけましょう。

 



 

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