TOPお役立ち情報請求書の電子化により業務改善へ!電子化のメリットと注意点を解説

お役立ち記事

請求書の電子化により業務改善へ!電子化のメリットと注意点を解説

  • 経理
  • 請求

請求書は従来、Excelなどで作成したものをプリントアウトして郵送するのが常識でしたが、最近では、PDF化した「電子請求書」をメールなどでやり取りする企業が増えています。紙の請求書を電子化することで様々なメリットが得られますが、企業によっては、社内の業務フローや文書の管理体制の問題から電子請求書への切り替えがうまくいかず、紙の請求書から脱却できないケースも少なくないようです。今回は、請求書の電子化を検討する企業が知っておきたいメリットや注意点などを解説していきます。



 

■請求書の電子化とは?

電子請求書とは、文字どおり「電子化された請求書」のことで、PDFデータで作成されるのが一般的です。

従来、請求書はExcelや専用ソフトなどで作成したものをプリントアウトして郵送するのが当たり前でした。ですが、「請求書を印刷する → 印鑑を押す → 封筒に宛名書きをする → 送付状を添える → 封筒に入れる → 切手を貼る → 投函する」という一連の請求書発行業務が、多くの企業にとって業務効率化の足かせになっていたのも事実です。そのようななか、紙の請求書に代わる存在として普及し始めたのが電子請求書です。

電子化した請求書の送付は法律上OKなの?

電子化した請求書を発行することは、法律的に問題ありません。そもそも、請求書自体が法律によって発行が義務付けられている書面ではないので、その形式にも決まりはありません。請求をする側と支払いをする側が、金額などの請求情報について同じ認識を持つことができれば、紙の請求書でもPDFの請求書でも良いわけです。

一度、発行された請求書は証憑(しょうひょう)書類として一定期間の保存が義務付けられていますが、電子帳簿保存法によって電子データでの保存が認められた書類のなかに請求書も含まれており、要件を満たす場合は発行した側も受領した側も電子データでの保存が認められています。もちろん、税務調査が入った場合も、紙の請求書か電子化された請求書が保存されていれば問題はありません。

 

■請求書電子化のメリット

紙の請求書から電子請求書に切り替えるメリットとしては、一般的に以下の点が挙げられます。

  • コストを削減できる

請求書を紙で発行する場合、用紙代、印刷代のほか、封筒代や切手代などの費用がかかります。取引先の数や請求件数が多くなるほどコストが膨らんでいきますが、電子請求書に切り替えればこれらのコストを削減できます。

  • 業務効率化を実現できる

請求書を紙で発行・保管する場合、印刷、封入、宛名書き、切手貼り、投函、ファイリングなど、決して少なくない手間がかかります。その点、電子請求書はこのような手間がかからず、作業効率が向上します。加えて、電子請求書は紙の請求書に比べて検索性に優れているので、後に参照したい場合もすぐに目的の請求書を見つけられるでしょう。

  • スピーディーに請求書を発行できる

通常、電子請求書はパソコンで作成したら、メールなどに添付して送信するだけ。取引先が求めるタイミングでスピーディーに請求書を発行できます。紙の請求書のように、郵送によるタイムラグが生じることはありません。

  • 省スペース化できる

上述のとおり、請求書の保存期間は原則として、法人の場合は7年、個人事業主の場合は5年とされています。この期間中にストックされていく請求書を紙で保存する場合はキャビネットや書庫などが必要になりますが、電子請求書であれば場所を取らず省スペース化につながります。

  • 環境負荷を軽減できる

環境負荷を軽減するため、あらゆる領域でペーパーレス化が進んでいます。請求書に限らず、紙での保存から電子データへの保存に切り替えることで環境保全にも貢献できます。

 

■請求書電子化のデメリット

電子請求書の導入はメリットばかりではありません。請求書の電子化を検討する際は、デメリットも把握したうえで導入すべきかどうかを判断するようにしましょう。一般的に電子請求書のデメリットと言われるのは、以下の3点です。

  • 業務フローの見直しや研修が必要

紙の請求書から電子請求書に切り替える場合、社内の請求業務のフローやルールを見直さなければいけません。さらに、スムーズに切り替え・運用をおこなうためには、これまでとの変更点やツール・システムの使い方などを共有するための研修も必要になるでしょう。

後述しますが、「来月から紙の請求書は廃止して、すべて電子請求書で!」というわけにはいきません。しばらくの間は、紙の請求書と電子請求書が併存するはずなので、社員の混乱を招かないようにすることも大切です。

  • 取引先が電子請求書を受け入れてくれるとは限らない

昨今、請求書を電子化する企業が増えていますが、「紙の請求書でなければ、支払処理をおこなわない」といった社内規定を設けている企業も少なくありません。このようなケースでは、取引先のルールを無視して電子請求書を発行するわけにはいきません。

取引先によって請求・支払いに関するルールが異なるため、電子請求書を導入する際も、一斉に切り替えるのは現実的ではありません。たとえば「今期中に取引先の50%、来期中に取引先の70%」など、目標を決めて段階的に電子化を進めていくのがいいでしょう。

  • 取引先に負担をかけてしまうケースがある

それまでずっと紙の請求書で管理してきた会社が電子データでの管理に切り替えるには、社内の業務フローやルールを変更する必要があります。

また、請求書は一定期間の保管義務がありますが、紙で請求書を保管している会社が電子請求書を受け取った場合、保管するためにわざわざプリントアウトするケースも考えられます。これでは、取引先に負担を強いることになってしまいます。自社が電子請求書を導入することで、取引先に負担をかける可能性があることは認識しておくべきです。

  • 情報漏えいのリスクがある

請求書を電子データで取り扱うことになると、外部からの不正アクセスによって情報漏えいが起きる可能性があります。また、電子データであればUSBメモリなどで持ち出すこともできるので、内部から情報漏えいが起きる可能性も出てきます。請求書を電子データで管理する以上、情報漏えいを防ぐためのセキュリティ対策やアクセス権限の制限などのルールづくりが必須になるでしょう。


 

電子化された請求書を受け取る側のメリット・デメリット

電子化された請求書を受け取る側には、主に以下のようなメリットとデメリットがあるとされています。

電子化された請求書を受け取る側のメリット

・メリット1:すぐに請求書を受け取ることができる

「締め日が迫っているのに取引先から請求書が届かない・・・」というのは、どの会社でもよくある悩みだと思います。紙の請求書の場合は郵送が前提になるので、取引先に届くまでに1~2日程度かかります。一方、電子化された請求書であれば、受け渡しはメールの送受信やWeb上でのダウンロードという形になります。そのため、発行されるのとほぼ同時に請求書を受け取ることができます。

・メリット2:過去の請求書を探しやすい

紙の請求書をファイリングして、キャビネットなどに保管している会社は多いと思いますが、過去の請求書を参照する必要があるときに目的の請求書を見つけるまでに時間がかかりがちです。一方、電子化された請求書は検索性に優れているため、たとえば請求書No.や発行日、取引先名などで簡単に検索して見つけることができます。

電子化された請求書を受け取る側のデメリット

請求書を紙で保存している企業は、電子化された請求書が送られてきた場合、それを印刷する必要があり手間が増えてしまいます。もちろん、電子帳簿保存法による一定の要件を満たす場合は、受け取った電子データのままで保存することができますが、そうする場合は社内の業務フローを変更する必要があるので、やはり負担になってしまいます。そのため、初めて取引をする企業の場合は、請求書を発行する前にデータ形式で発行していいか、紙の請求書にすべきかを確認するのがいいでしょう。

■請求書電子化を進めるコツ・注意点

請求書を電子化するメリットは多々ありますが、自社の意向だけで電子請求書へ切り替えられるものではありません。

たとえば、取引先が紙で請求書を管理している場合は、先方に業務フローを変えてもらう必要があるかもしれません。取引先にPDFで請求書を送付しても、結局、先方がプリントアウトして紙で保存するなど、取引先に負担をかけてしまうケースも考えられます。電子請求書への切り替えを検討する際は、必ず取引先各社の了承を得るようにしましょう。

  • 案内メールの送り方・文言

紙の請求書から電子請求書に切り替える場合、事前に取引先の了承を得るのがビジネスマナーです。その際は、取引先に送る案内メールも重要になってきます。案内メールを作成する際のポイントをご紹介します。

  • 社会全体の流れを盛り込む

社会全体の流れとして、環境保全の意識が高まっていることや、ペーパーレス化が推進されていることなどを盛り込み、社会の要請に対応するために電子請求書を導入する旨を伝えるのがいいでしょう。具体的には、以下のような文例が想定できます。

「近年、地球環境問題がクローズアップされるようになり、企業においても環境保全の取り組みが重視されるようになりました。弊社も環境保全活動の一環としてペーパーレス化に取り組むため、◯月以降に発行する請求書を電子化する運びとなりました。大変お手数をおかけいたしますが、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます」

  • 取引先の利便性を盛り込む

紙の請求書から電子請求書に切り替えることによる、取引先の利便性を盛り込みます。具体的には、以下のような文例が想定できます。

「弊社では◯月より、電子請求書の導入を予定しております。基本的に、請求書データは弊社担当者よりメールでお送りしますが、お客様にてWeb上でダウンロードしていただくことも可能です。現在の郵送による場合に比べ、請求書の発行がスピーディーになり、お客様に届くのも早くなります。また、お客様はWeb上で過去1年分の請求書データをいつでもダウンロードしていただけます」

  • 取引先を啓蒙することも大事!

請求書の電子化は、請求書を発行する側と受け取る側、双方にメリットがある取り組みです。取引先が今すぐに電子請求書に対応できないケースもあると思いますが、将来的に検討してもらえるよう、電子請求書のメリットを伝えることも大切です。請求書の電子化によってどのようなメリットが得られるのかを、分かりやすく説明できるようにしておきましょう。

上述のとおり、電子請求書のメリットとしては以下の点が挙げられます。

・コストを削減できる
・業務効率化を実現できる
・スピーディーに請求書を発行できる
・省スペース化できる
・テレワーク・在宅勤務を推進できる

■電子請求書の保存について

請求書をPDFなどの電子データで作成し、取引先に送信すること自体に法的な問題はありません。取引先との合意があれば、紙の請求書の代わりに電子請求書でやり取りすることができます。

一方で、請求書の「保存」に関しては、電子請求書ならではの注意点があります。そもそも、受け取った請求書は一定期間、保存しておく必要がありますが(原則として法人は7年、個人事業主は5年)、電子データとして保存するためには法令が定める要件を満たさなければいけません。

■e-文書法と電子帳簿保存法

少しややこしいのですが、請求書を電子データで保存できる根拠としては、「e-文書法」「電子帳簿保存法」という類似した2つの法律が存在しています。ちなみに、e-文書法は内閣官房が、電子帳簿保存法は国税庁が管轄する法律です。

  • e-文書法とは?

e-文書法(電子文書法)とは、法的に保存が義務づけられている請求書などの文書について、紙だけでなく電子化した文書ファイル(電磁的記録)での保存を認める法律です。後述する要件を満たすことによって、請求書を電子データで保存できるようになります。

  • e-文書法における電子請求書を保存するための要件

①見読性

電子請求書は、ディスプレイなどで明瞭な状態で読めるようにしておく必要があります。また、紙としてもプリンタで出力できることが求められます。

②完全性

電子請求書が操作ミスなどで消失・破損するのを防止するとともに、万が一、データの改変・改ざんがあったときはその事実を確認できる措置を講じておかなければいけません。

③機密性

電子請求書の機密性を守るため、許可した人以外はアクセスできないようにするなど、不正アクセスに対するリスク管理が必要です。

④検索性

必要に応じて電子請求書をすぐに参照できるよう、インデックスで検索できるシステムを整備するなど、体系的に保存しておかなければいけません。

  • 電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法は、請求書などの国税関係帳簿書類を電子データとして保存することを認める法律です。従来、紙による保存が義務づけられていた国税関係の帳簿書類について、後述する要件を満たすことで電子データによる保存が認められます。

なお、パソコンで作成したデータのほか、紙の書類をスキャンして電子化したデータも電子データとして認められるほか、要件を満たせば、スマートフォンやデジタルカメラで撮影したものも電子データとして保存が可能です。

  • 電子帳簿保存法における電子請求書を保存するための要件

①税務署長の承認

紙で保存していた請求書を電子データでの保存に変更する場合は、事前に税務署長の許可を得る必要があります。電子保存を始める日の3ヶ月前までに所轄税務署長に申請書を提出しなければいけません。

なお、電子取引で(電子ファイルのままで)請求書を取り交わした場合もデータの保存が必要ですが、税務署長の承認は不要です。フリーランスとの契約・発注・請求を一元管理できる「pasture」なら、クラウド上で電子請求書のやり取りを完結でき、請求書のデータは自動でクラウド上に保存されます。スキャンする手間もかかりませんし、税務署長への申請も不要です。

②真実性・可視性

電子請求書を保存するためには、真実性と可視性の確保が求められます。真実性とは「請求書が改ざんされておらず本物であると証明できること」、可視性とは「誰でも容易に視認できること」を言います。電磁的記録による保存とスキャナ保存では要件が異なるので、詳しくは国税庁のパンフレットをご確認ください。

>> はじめませんか、帳簿書類の電子化!|国税庁

>> はじめませんか、書類のスキャナ保存!|国税庁

 

請求書電子化に向けた直近のトレンド

環境保全の観点から、世界的にペーパーレス化が推進されてきましたが、日本企業はなかなか紙文化から脱却できず、請求書も紙で発行している企業が大半でした。しかし、2020年になると請求書を電子化する企業が続々と増えました。その大きなきっかけになったのが、新型コロナウイルスの流行によるテレワーク・在宅勤務の推進です。

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、多くの企業がテレワークの導入を試みましたが、すぐに「紙文化の弊害」に直面することになります。「請求書にハンコをもらうためにオフィスに行かなければいけない」「取引先から届いた請求書を確認するため、会社のポストを見に行かなければいけない」といったケースが続出。このような問題をクリアするためには、請求書の電子化が必須だったのです。

  • 2023年度中の請求書、完全デジタル化を目指して

政府も、企業間でやり取りする請求書の完全なデジタル化を目指しており、約70のシステム・ソフトウェア会社と協議を進め、標準ルールとして国際規格を導入することを決定しました。2022年10月を目途にサービスを開始し、2023年度中に日本全体での普及を目指しています。

請求書データ仕様が統一され、完全にデジタル化されると、請求書を発行する側はシステム上で請求書データを作成・送信でき、請求書を受領する側もシステム上で自動仕訳や保存ができるようになります。これにより、経理担当者の負荷が軽減されるなど大きな効果が期待されています。

 

■まとめ~電子請求書の導入準備は入念に~

請求書の電子化が進んでいるとはいえ、まだ請求書の電子保存に対応している企業は多くはありません。社内ルールで、「紙の請求書をもらえないと支払いができない」という企業もあるでしょう。

本編でご説明したとおり、電子帳簿保存法では、一定の要件を満たせば発行側も受領側も電子データで請求書を保存することを認めています。また、ペーパーレス化の要請もあるため、請求書を電子化するのは企業の務めであるとも言えます。しかし、だからと言ってある月から突然、一方的に電子請求書に切り替えるのはビジネスマナー違反です。電子請求書の受け入れが難しい企業もあるはずなので、電子請求書を発行したい場合は、事前に取引先の業務フローなどを確認したうえで、相談・提案するようにしましょう。

フリーランスとの取引が多い企業には、電子請求書を簡単に作成できる「pasture」が役立ちます。フリーランス自身が電子請求書を発行するのも簡単ですし、発注企業が電子請求書を作成してフリーランスに承認をもらうことも可能。「pasture」の詳細はこちら



フリーランスマネジメントツールはpasture(パスチャー)