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電子帳簿保存法とは?導入のメリットと導入手順を解説

  • 電子帳簿保存法

法人税法などの規定により、企業は少なくとも7年間、国税関係の帳簿書類を保存する義務があります。企業規模や取引先の数によっては保管する書類は膨大な量となり、管理コストの負担も無視できないものになっていきます。

電子帳簿保存法は従来、紙で保存していた文書の電子保存を認めた法律です。施行以来、改正のたびに要件が緩和され、企業にとって電子保存がしやすいような法整備が進んでいます。今回は、電子帳簿保存法について要件や導入メリットなどを解説していきます。



 


■電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法は、国税関係の帳簿書類を電子データで保存することを認めた法律です。従来、紙で保存していた国税関係の帳簿書類について、一定の要件を満たすことで電子データやマイクロフィルムによる保存を認めています。

電子帳簿保存法に対応することで、パソコンや会計ソフトで作成したデータのほか、紙の書類をスキャンやスマホ・デジカメで撮影したデータの電子保存や、そもそもメール等を経由して電子上で受領したデータの電子保存も可能となります。

 

●電子帳簿保存法の背景

電子帳簿保存法は、1998年に施行された法律です。

企業は、法人税法などの規定により、少なくとも7年間は帳簿書類を保存する義務があります。そのため、電子帳簿保存法の施行前は紙の原本で保存するのが必須でした。

取引量が多いほど帳簿書類の量も膨大になり、企業によっては外部に倉庫を借りるなどして保管スペースを確保しているケースもありました。

紙での保存は、コストや管理の手間など企業に大きな負担を強いるものでした。しかし、ITテクノロジーの進化によって技術的に電子データでの保存が可能になり、1998年に電子帳簿保存法が誕生しました。2005年の改正では紙媒体のスキャンによる電子保存が認められ、2016年の改正ではスマホで撮影した画像での保存も認められるようになりました。後述しますが、2020年の改正でも要件が緩和されており、企業にとって文書の電子保存はますます導入しやすいものになっています。

 


■電子帳簿保存法が適用になる帳簿書類とは?

電子帳簿保存法の正式名称は、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」と言います。名称にも含まれているように、電子帳簿保存法の対象になるのは「国税関係帳簿書類」です。

国税関係帳簿書類は、大きく「帳簿」と「書類」に分類できます。さらに、書類は「決算関係書類」と「取引関係書類」に分類できます。

・帳簿

帳簿とは、仕訳伝票や勘定科目の元帳、仕訳日記帳など、決算資料を作成する際の根拠となる資料などを指します。

・書類(決算関係書類、取引関係書類)

決算関係書類とは、棚卸表や貸借対照表、損益計算書など、いわゆる「決算書」に含まれるような書類を指します。取引関係書類とは、請求書や注文書・発注書、見積書や納品書など、取引の証拠になるような書類を指します。

 

●電子帳簿保存法におけるデータの保存方法

電子帳簿保存法におけるデータの保存方法は、大きく「電磁的記録による保存」と「スキャナ保存」の2つに分かれます。

帳簿書類の種類ごとにデータの保存方法をまとめると、以下のようになります。

区分 対象文書の例 保存方法
電磁的記録による保存 スキャナ保存
A:帳簿 仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳 など
B:決算関係書類 貸借対照表、棚卸表、損益計算書など
C:取引関係書類 注文書・発注書、契約書、領収書、請求書、見積書、納品書 など

・紙で発行した書類の控え

・電子取引データ

・紙で受領した書類

 

■電子帳簿保存法が適用にならない書類は?

電磁的記録等による保存等が認められる国税関係帳簿は、自己が最初の記録段階から一貫してコンピュータを使用して作成するものです。そのため、「手書き」で作成された国税関係帳簿は、電磁的記録等による保存等は認められません。なお、国税関係書類に関しては、自己が一貫してコンピュータを使用して作成するもののほか、書面で作成・受領したものについてもスキャン文書による保存が認められます。

また、電磁的記録を出力した請求書等に手書きによって新たな情報を付け加えたうえで相手方に交付した場合、その写しは一貫してコンピュータを使用して作成されたものではないので、書面で保存しなければいけません。

 

■電子帳簿保存法の要件

電子帳簿保存法における電子保存の要件についてご説明します。

●帳簿および決算関係書類

上の表で示したとおり、「A:帳簿」と「B:決算関係書類」は、電磁的記録による保存が認められています。会計ソフトなどに入力したオリジナルの電子データを保存することで、紙での保存を省略することができます。

●取引関係書類

注文書・発注書、契約書、請求書、納品書などの「C:取引関係書類」は、自社で発行した控えと、取引先が発行したものでは保存方法が変わってきます。想定できる3つのパターン別に解説していきます。

▼パターン1:紙で発行した書類の控え

取引先に発行する取引関係書類を自社でパソコンで作成した場合、自社用の控えは紙ではなく電子データで保存することができます。電子保存をするには、「真実性の確保」や「可視性の確保」などの要件を満たす必要があります。また、電子保存を始める日の3ヶ月前までに税務署長の承認を得なければいけません。詳細は国税庁のページでご確認ください。

>> はじめませんか、帳簿書類の電子化!|国税庁

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018004-061_01.pdf

▼パターン2:紙で受領した書類

取引先から紙で受領した取引関係書類は、スキャナで読み込んで電子データで保存することができます(スキャナ保存)。スキャナ保存をするためには、「スキャナ装置のスペック」「タイムスタンプの付与」「入力期間の制限」などの要件をクリアする必要があります。また、スキャナ保存を始める日の3ヶ月前までに税務署長の承認を得なければいけません。詳細は国税庁のページでご確認ください。

>> はじめませんか、書類のスキャナ保存!|国税庁

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018004-061_02.pdf

▼パターン3:電子取引データ

電子取引をおこなった場合は、その取引情報を電子データで保存します。電子取引とは、やりとり自体を紙ではなく電子でおこなう取引のことです(※1)。電子帳簿保存法第10条(※2)では、電子取引をおこなった場合は、原則として、その電子取引に関連する内容はすべてデータで保存しておく必要があります。

なお、データ保存ではなく、電子データを書面に印刷し、紙で保管することも認められています。

※1:電子取引の範囲

・いわゆるEDI取引
・インターネット等による取引
・電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む)
・インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引

参考:法第2条((定義))関係|国税庁
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sonota/980528-2/01/01_02.htm

 

※2:電子帳簿保存法第10条

所得税及び法人税の保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。

電子取引のメリットは、電子取引データを保存する際は、税務署長の承認は必要がない点です。ただし、電子帳簿保存法で定められた以下のような要件に則ってデータを保存する必要があります。

●真実性の確保

以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  1. 電子的に受領した書類に受領者がタイムスタンプを付与する
  2. 訂正および削除の防止に関する事務処理規定を定めて運用する、或いは同趣旨の条項を含む保存サービス提供者との契約を締結する
  3. 発行者のタイムスタンプが付与された電子的データを受領する
  4. 受領した電子的データを受領者側が訂正や削除をした場合に履歴が残る、或いは自由に訂正や削除ができないシステムやサービスを利用して、電子データの授受及び保存を行う

●関連書類の備付

利用する電子契約システムの概要を記載した書類(マニュアル)を備え付けておく必要があります。

●見読性の確保

電子契約の内容は、ディスプレイ(画面)やプリンタ(紙)を使ってすぐに確認できるようにしておく必要があります。

●検索性の確保

取引年月日などが範囲検索でき、且つ2種類以上の任意の記録項目を組み合わせて検索条件を設定できるシステムである必要があります。

2020年10月の電子帳簿保存法改正によって、電子取引データの保存要件が緩和されています。詳しくは以下の「電子帳簿保存法、2020年10月改正について」をご覧ください。



■電子帳簿保存法にともなう「電子データ保存」を進めるおすすめタイミング

2022年1月に電子帳簿保存法が改正されます。この改正により、これまで電子帳簿保存やスキャナ保存の足かせになっていた税務署長による事前承認制度が廃止されます。そのため、電子帳簿保存法に対応した会計システム

やスキャナなどがあれば、すみやかに電子データ保存が可能になります。さらに、スキャナでの読み取り前に受領者が自署することが不要になるほか、タイムスタンプ付与の猶予期間も3営業日から最長2ヶ月に延長されるなど、タイムスタンプに関する要件も緩和されます。

このように、電子データ保存のハードルは大幅に下がるので、2022年1月の改正と同時に電子データ保存を進められるよう準備に着手しましょう。

 

紙での一元管理は今後厳しくなる見通し

これまでは、電子データで受領した書類は、電子データでの保存も紙での保存も認められていました。そのため、電子データで受領した書類を印刷して、紙で一元管理している企業も少なくありませんでした。

しかし、改正電子帳簿保存法では、電子データで受領した書類を紙に印刷して保存することはできなくなり、電子保存が義務化されます。一方で、紙で受領した書類の電子保存は申請が不要になり、電子データでも紙でも保存することができます。今回の改正は、電子データを印刷して紙で一元管理することを難しくすると同時に、紙を電子化して電子データで一元管理することを容易にする改正だと言えるでしょう。

不正行為のペナルティにも十分注意を

改正電子帳簿保存法では、電子データ保存の要件が緩和される一方で、対応していない場合の罰則が厳格化されています。改正前は重加算税の適用のみでしたが、改正後は、電子取引データが仮装・隠蔽された場合、重加算税に本税の10%に相当する金額が上乗せされて課税されます。

また、改正後も電子取引において紙で国税関係書類を保存していた場合、青色申告や連結納税の承認が取り消されるリスクがあるほか、現在受けている税優遇が受けられなくなる可能性もあるので要注意です。

 


■電子帳簿保存法、2020年10月改正について

電子帳簿保存法の一部が改正され、2020年10月1日に施行されました。改正の背景としては、スマホアプリによるキャッシュレス決済の普及や、テレワーク推進などによるビジネス文書のペーパーレス化があります。今回の改正では、電子取引における、電子データ保存の要件が緩和されています。

 

●改正のポイント
改正前は、電子データ保存の要件として、改ざん防止のための事務処理規定を作成して運用するか、データを受け取った側がタイムスタンプを付与する必要がありました。

改正後は、データの発行者側がタイムスタンプを付与していれば、受領者側がタイムスタンプを付与しなくても電子データを保存できることになりました。ただし、データの発行者側がタイムスタンプを付与していない場合は、改正前と同様に受領者側でタイムスタンプを付与しなければ電子データの保存は認められません。

加えて、データを受け取った側が自由にデータを改変できないシステム(クラウド会計システムなど)を利用していれば、タイムスタンプを付与しなくても電子データの保存が認められます。

 

▼タイムスタンプとは?

タイムスタンプとは、ある時刻にその電子データが存在していたことと、それ以降、改ざんされていないことを証明する技術です。タイムスタンプに記載されている情報と、オリジナルの電子データから得られる情報を比較することで、タイムスタンプが付与された時刻から改ざんされていないことを確認できます。

電子データはコピーが容易であるがゆえに、どうしても改ざんのリスクが伴います。文書を電子化するにあたっては、その電子文書が改ざんされていない原本であることを証明する必要があり、そのために生まれたのがタイムスタンプです。

 


■電子帳簿保存制度を導入するための手順・準備

自社が作成した電子文書の控えを電子データで保存する場合は、事前に税務署長の承認を受ける必要があります。

また、取引先から受け取った紙の文書のスキャンデータを保存する場合も、事前に税務署長の承認が必要です。

 

税務署長の承認を得るためには、電子データでの保存を希望する日の3ヶ月以上前に税務署に申請書を提出しなければいけません。申請書は、国税庁のWebサイトからダウンロードできます。

>> [手続名]国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請|国税庁

>> [手続名]国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請|国税庁

一方、電子取引において授受をおこなった書類の電子保存に関しては、事前に税務署長の承認が必要ありません。

 


■電子帳簿保存法に対応するメリット

電子帳簿保存法に対応して、紙での保存から電子保存に切り替えることで以下のようなメリットが期待できます。

●文書の管理コストを削減できる

紙で文書を保管・管理していると、用紙代、印刷代、インク代だけでなく、キャビネットや書庫、倉庫など保管スペースを確保するためのコストもかかります。紙での管理から電子データでの管理に切り替えれば、文書の作成コストや保管コストを大幅に削減することができます。

●必要なときに必要な文書をすぐに見つけられる

紙で文書を保管する場合と、電子データで文書を保管する場合の大きな違いの一つが「文書の検索性」です。電子データで保管することで検索性が大幅に向上するため、必要なときに必要な文書をすぐに見つけることができます。もちろん、税務調査の際も求められた文書をすぐに提示できます。

●経理業務を効率化できる

企業が電子帳簿保存法に対応する場合は通常、会計システムやワークフローシステム、電子帳票システムなどを利用することになります。システムを導入することで、従来、手作業でおこない、マンパワーがかかっていたルーティン業務を自動化できるようになり、経理業務の効率化につながります。

●セキュリティ対策が向上する

文書を紙で保管している場合、紛失や盗難のリスクは避けられません。一方、文書を電子データ化していれば物理的に保管する必要がなくなり、紛失や盗難の心配もなくなります。また、紙で保管している場合、文書が紛失・消失したら復元は困難ですが、電子データの場合、適切にバックアップをとっていれば、万が一、火災・水害などの災害に遭ってしまってもデータの復旧が可能です。

●環境負荷を低減できる

文書を電子データで保管するようになると紙を使う量が大幅に減少するため、資源の節約、CO2の削減につながります。電子帳簿保存法に対応することはペーパーレス化を促進することであり、結果として環境保全に貢献できます。

 


■まとめ~文書の電子化・電子保存が必須の時代へ

働き方改革が推進され、テレワーク・在宅勤務が拡大する昨今、あらゆる文書の電子化・ペーパーレス化が進んでいます。文書のペーパーレス化を進めるにあたっては、今回解説した電子帳簿保存法の理解が欠かせません。電子帳簿保存法を正しく理解したうえで、できるところから文書の電子化・電子保存に着手していきましょう。文書の電子化・電子保存の体制が整えば、あらゆる事務処理のスピードアップ、負担軽減につながるはずです。

 

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※本記事は2021年7月時点の官公庁Webサイトを参考に編集をしています。各種法律・制度についての最新情報や問い合わせ先などは各官公庁のWebサイトでご確認ください。



 

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