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各省庁が定める下請法ガイドラインの活用方法

  • 下請法

下請法は、下請事業者への支払期日や支払方法等を明確化して、親事業者による優越的地位の乱用を防止するもので、業種を問わず適用されます。各業種の業態・商慣習に沿った下請法の適切な運用を図るべく、各省庁が業態ごとにガイドラインを定めています。ここでは、ガイドラインがある業種、ガイドラインの活用法を解説します。



■下請法ガイドラインは各産業に応じて定められている

親事業者から下請事業者へさまざま行われる下請取引。下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」)の適用対象を明確化し、禁止行為を具体的に示すガイドラインが幅広い業界に向けて制定されています。

ここでは、下請法の概要や下請適正取引等の推進のためのガイドライン(以下、「ガイドライン」)の対象業種について、次のとおり解説します。

・下請法はすべての下請事業者に適用される
・現在19種の業種においてガイドラインが定められている

順を追って説明します。

 

●下請法が適用される下請事業者とは

買いたたきなど、親事業者による優越的地位乱用を防ぐために定められている下請法(下請代金支払遅延等防止法)。

下請法の目的は、下請代金支払いの遅延などを防止することで、下請取引を公正化するとともに、下請事業者の利益を保護することにあります。(下請代金支払遅延等防止法第1条

 

下請法では、「取引事業者の資本金の区分」「取引の内容」の二つの側面から、下請取引を定義しています。(下請代金支払遅延等防止法第2条

次の区分により、取引内容に応じた資本金区分によって、下請取引に該当するか判断します。

 

・取引事業者の資本金の区分

資本金区分によって、下請取引に該当するかを判断します。資本金規模の大きい事業者から小さい事業者に委託していることを前提に、資本金の金額によって下請法が適用されるかどうかが決まります。また次に説明する「取引の内容」により資本金の区分が異なります。

・取引の内容

取引の内容によって、資本金の区分が異なります。

取引内容は「物品の製造・修理委託」「情報成果物作成・役務提供委託」に区分されています。上記のいずれに該当するかにより、資本金額の区分基準が異なります。

 

下請取引に該当する下請事業者は下請法による保護が適用されます。

下請法について詳しく知りたい方は、次の公正取引委員会のサイトをご参考ください。

(参考)公正取引委員会:「法令・ガイドライン等(下請法)

 

●現在19種の業種においてガイドラインが定められている

下請取引において、下請事業者と親事業者との間で、適正な取引が行われることを目的に、国が策定するガイドライン。

業種によって取引構造が異なることから、国は、業種ごとに分かりやすいガイドラインを定めています。経済産業省、国土交通省、総務省など各業種を管轄する省庁がそれぞれ策定し、2021年12月末時点で次の19業種のガイドラインが発行されています。

1.素形材
2.自動車
3.産業機械・航空機等
4.繊維
5.情報通信機器
6.情報サービス・ソフトウェア
7.広告
8.建設業
9.建材・住宅設備産業
10.トラック運送業
11.放送コンテンツ
12.金属
13.化学
14.紙・加工品
15.印刷
16.アニメーション制作業
17.食品製造業
18.水産物・水産加工品
20.養殖業

最新のガイドラインを確認したい、あるいはガイドラインの内容を知りたい方は、次のサイトをご参考ください。

(参考)中小企業庁:「下請適正取引等の推進のためのガイドライン


■ガイドラインにはベストプラクティスが示されている

下請取引の望ましい取引関係を示すために、ガイドラインには、望ましい取引事例であるベストプラクティスが定められています。

ガイドラインのベストプラクティスとは、以下のようなものです。

・ベストプラクティスとは望ましい関係性や改善事例
・広告業界でのベストプラクティス
・IT・ソフトウェア分野でのベストプラクティス

順を追って、見ていきます。

 

●ベストプラクティスとは望ましい関係性や改善事例

親事業者と下請事業者における望ましい関係を「ベストプラクティス」といいます。

このベストプラクティスは、次の考え方をベースとし、親事業者と下請事業者は共存する運命共同体であるとしています。

“下請事業者と親事業者とを対立するものと捉えない”

“苦しいときこそ、それを共に乗り切る共存共栄のための運命共同体との認識を持つ”

(引用)中小企業庁:「「下請適正取引等の推進のためのガイドライン」(概要及びベストプラクティス)

 

ガイドラインは、業種ごとの特性を踏まえた下請法の具体的な解説とともに、ベストプラクティスや改善例を具体的に示しています。下請取引の公正化を推進し、親事業者と下請事業者の双方の競争力の維持・向上を目指します。

 

●広告業界でのベストプラクティス

広告業界のガイドラインとしては、経済産業省によって「広告業界における下請適正取引等の推進のためのガイドライン」が定められています。

ここに定められるベストプラクティスは、下請法の遵守状況等について、広告会社等を対象に、ヒアリング・アンケート調査を実施し、改善事例をまとめたものです。次に、ガイドラインに示されたベストプラクティスを紹介します。

・改善例1:書面交付の問題 

親事業者において、下請法対象事業者を中心に「注文書交付」「請求書に注文書・納品書のコピー添付」をそれぞれ義務化することで、改善を図った。

親事業者:発注窓口の一本化に加え、金額が未定であっても発注確認書発行を義務化する等で、発注書交付を徹底している。

下請事業者:納品直前の金額が変更されている場合は、親事業者から書面で詳細報告を求め、管理部門からヒアリングをする等、社内で取引の適正管理を徹底している。

 

口頭による発注は、さまざまなトラブルになる要素であり、親事業者による誤発注であっても、下請事業者は誤発注による損失を受け入れざるを得ない状況になりやすいでしょう。親事業者は、発注にあたって、必ず発注書によって明確に記載した書面を交付することが求められます。

 

・改善例2:買いたたきの問題 

親事業者と下請事業者双方の合理的なコスト削減を行うことを前提とした取引をしている。

親事業者:下請事業者から見積りを出してもらったうえで、双方で具体的なコスト削減項目を詰めてから発注額を決定するため、取引上、合理的な水準を保てるようになった。

下請事業者:親事業者とは、定期的な打合せの下、双方で知恵を出し合いながら取引している。

 

下請代金を決定する際、親事業者が下請事業者に通常支払うべき対価より、著しく低い金額である場合に「買いたたき」と判断されます。この買いたたきとならないように徹底するためには、このベストプラクティクスのように、不当に下請代金を決定しないよう、双方で十分に協議をすることが重要です。

 

(参考)経済産業省:「広告業界における下請適正取引等 の推進のためのガイドライン

 

●IT・ソフトウェア分野でのベストプラクティス

IT・ソフトウェア分野のガイドラインは、経済産業省によって「情報通信機器産業における下請適正取引等の推進のためのガイドライン」が定められ、ベストプラクティスとして改善事例が複数示されています。

事例10「情報セキュリティの要求と費用の分担」では、機密保持を目的とした情報セキュリティ対策費用を不当に下請事業者に負担させることなく、親事業者が負担する改善例が示されています。

事例11「情報システムの工夫」では、親事業者が下請法違反とならないように、発注や納期設定を必ず業務システムを通して行うことで、「発注書面の交付義務の遵守」「調達担当者の裁量による納期変更防止」などを情報システムの工夫で改善した事例を示しています。

(参考)経済産業省:「情報通信機器産業における 下請適正取引等の推進のためのガイドライン

 

下請法違反を未然に防止するため、情報システムの工夫として、請求管理システムを導入することも有効でしょう。

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■ガイドラインは下請法遵守のための業種ごとの指針を示している

ガイドラインは、下請法遵守のため、業種ごとの指針を示しているものですが、すべての業種に定められていないため、中小企業庁では包括的なガイドラインも定めています。

ここでは、ガイドラインについて次を解説していきます。

・下請法は下請事業者を保護するためのもの
・包括的なガイドラインを中小企業庁が定めている

順を追って説明します。

 

●下請法は下請事業者を保護するためのもの

下請法は、下請取引を公正化し、下請事業者の利益を保護するため、親事業者に次のことを禁じています。

1.受領拒否
2.支払遅延
3.減額
4.返品
5.買いたたき
6.物の購入強制・役務の利用強制
7.報復措置
8.有償支給原材料等の対価の早期決済
9.割引困難な手形の交付
10.不当な経済上の利益の提供要請
11.不当な給付内容の変更、やり直し

業種によって違いはなく、禁止事項は共通していますが、業種ごとの特性に応じて、禁止事項や改善事項を分かりやすくガイドラインで示しています。

ガイドラインがない業種においては、下請法の条文に基づいて検証する、あるいは次に紹介する包括的なガイドラインを参考にしましょう。管轄する省庁に問い合わせすることも有効と考えられます。

 

●包括的なガイドラインを中小企業庁が定めている

下請法に関するガイドラインとしては、2021年12月末現在、上記の通り19業種に向けたガイドラインが各省庁より発行されています。そのほか、ガイドラインが発行されていない業種も参考にできるよう、中小企業庁によって、「下請適正取引等の推進のためのガイドライン」(概要及びベストプラクティス)」が発行されていますので、必要に応じて参考にしてください。

(参考)中小企業庁:「「下請適正取引等の推進のためのガイドライン」(概要及びベストプラクティス)


■最後に

本記事では、下請法やガイドラインの概要、活用法のほか、ガイドラインにおけるベストプラクティクスの紹介をしました。

下請法を遵守するため、親事業者と下請事業者における取引を公正化するためには、ガイドラインを十分に理解することが肝要です。加えて、注文や請求実務において、書面交付の問題などを根本的に回避するためには、請求管理ツールの活用が有効です。

請求管理に関する下請法対応は、請求管理システムなどのITを活用し、管理体制を効果的に構築しましょう。

(下請法に関わる資料が欲しい方はこちらよりダウンロードいただけます。)

監修者コメント

下請法により、親事業者にはさまざまな義務が課されるとともに、下請事業者に対する「禁止行為」も規定されています。
たとえば不当に納品物を受領拒否したり下請代金の支払いを遅延したり、地位をかさにきて下請代金の減額を求めたり正当な理由なく返品したり買い叩いたりなどしてはなりません(谷も禁止行為の類型があります)。
下請法に違反すると、公正取引委員会から勧告を受けたり違反事実を公表されたりする可能性もあり、社会における信用を失います。悪質な場合には罰金が科されるケースもあるので、違反しないように注意すべきです。
取引を行う際には、まずは下請法が適用されるかどうかを確認し、適用されるならお互いに法律やガイドラインに従った適正な対応をとりましょう。下請事業者が親事業者によって下請法違反の行為をされたら、関係各省庁の窓口や弁護士などに相談してみてください。

■本記事の監修者
福谷陽子/元弁護士 兼 監修ライター

保有資格:司法試験合格、簿記2級、京大法学部在学中に司法試験に合格。10年にわたる弁護士実務経験とライティングスキルを活かして不動産メディアや法律メディアで精力的に執筆中。不動産については売買、賃貸、契約違反、任意売却、投資、離婚、相続、解体や許認可等、あらゆる分野に精通。

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