翻訳の外注費用相場は?メリットや外注の選び方を解説
ビジネスのグローバル化が進み、国をまたいで企業同士でメールのやり取りをしたり、契約を締結したりするのが当たり前になりました。また、製品・サービスを海外展開する企業も増えています。それにともない、ニーズが拡大しているのが「翻訳」です。今まさに、外注できる翻訳会社を探している企業も少なくないでしょう。今回は、翻訳を外注するメリット・デメリットや、外注する際の注意点、費用などについて解説してきます。
CONTENTS
■翻訳業務を外注するメリット・デメリット
ビジネスが急速にグローバル化するなか、母国語以外の言語を理解できる・話せる人が増えており、日本人でも英語や中国語を使える人が増えています。しかし、「外国語ができる = 翻訳ができる」ということにはなりません。
翻訳というのは非常に特殊なスキルであり、外国語が理解できて話せる人でも、ビジネス文書の翻訳ができる人はほとんどいません。企業で翻訳が必要になったとき、「△△部の◯◯さんは留学経験があって英語ができるから頼んでみよう」という話になることがあるかもしれません。しかし、外国人に道案内をするだけなら問題はありませんが、ビジネス文書を翻訳するのは難しいでしょう。
最適な翻訳をするためには、その言語の文法・語彙を知っているだけでは不十分であり、その言語を使う人々の文化や慣習を理解している必要がありますし、その言語を使う人々の価値観や常識、考え方などを把握していなければいけません。そのあたりの理解に乏しい人が翻訳をすると、ニュアンスの違った文章になりがちですし、場合によっては的外れで意味の分からない文章になってしまうケースもあります。また、翻訳元の言語だけでなく、翻訳先の言語(自分の母国語)についても豊かな文章能力と豊富な語彙力がないと精度の高い翻訳をすることはできません。
翻訳業務を外注する主なメリット・デメリットについてご説明します。
- 翻訳業務を外注するメリット
▼メリット01:クオリティの高い翻訳ができる
翻訳に関してよくある誤解が、「バイリンガルなら翻訳ができる」というもの。しかし、「外国語を話せる」というスキルと「外国語を翻訳できる」というスキルは、まったく別ものです。近年、日本企業ではTOEICのスコアを採用基準の一つとするところも増えていますが、語学試験のスコアが高く、外国語でコミュニケーションができるからと言って、翻訳ができるということにはなりません。
もちろん、日常のメールのやり取り程度であれば翻訳できると思いますが、ビジネス文書となると話は変わってきます。業界・分野ごとに特有の専門用語や言い回しがあるため、その言語を話せる人でも、業界に関する知識やボキャブラリーを持っていなければ、正しい翻訳はできません。
その点、翻訳会社に外注すればプロの翻訳者に翻訳してもらえるため、クオリティの高いアウトプットが期待できます。実績豊富な翻訳会社なら、その業界・分野ならではの特徴や、その国の文化・習慣を踏まえたうえで最適な翻訳が可能です。誤解を生まない正しい文章や、読みやすく洗練された文章は、企業としての信頼を高めてくれるでしょう。
▼メリット02:多言語翻訳ができる
日英翻訳や日中翻訳など、主要言語の翻訳は内製でおこなっている企業もありますが、近年は英語や中国語以外の翻訳ニーズも高まっています。ですが、マイナー言語になってくると、現地法人を置いている企業でなければ内製で翻訳するのは困難です。
その点、多くの翻訳会社は様々な言語の翻訳者を抱え、多言語翻訳に対応しています。相手国に現地法人がない企業でも、社内に相手国の言語を話せる人がいない企業でも、安心して翻訳を任せられます。今後、グローバル展開を考えている企業は、優秀な翻訳会社とパートナーシップを築いておくのが賢明です。
▼メリット03:レイアウト調整にも対応してもらえる
マニュアルやパンフレット、取扱説明書などのグラフィックデザインの場合、原文はきちんとレイアウトされていても、別の言語に翻訳すると文字数・単語数が増減してレイアウトが崩れてしまうことがあります。たとえば、日本語をロシア語に翻訳すればボリュームが大幅に増えますし、韓国語に翻訳すればボリュームが減るのが通常です。そうなると、枠からはみ出してしまったり、逆に無駄なスペースが空いてしまったりします。
翻訳会社のなかには、このようなレイアウト崩れを調整するDTP編集に対応しているところもあります。翻訳と同時にDTP編集に対応してもらえれば、社内の負担を大幅に軽減できるでしょう。
- 翻訳業務を外注するデメリット
▼デメリット01:翻訳者のレベルに差がある
翻訳のクオリティは翻訳者のスキルによって大きく左右されます。通常、翻訳会社では「翻訳コーディネーター」が窓口になり、依頼内容に最適な翻訳者をアサインしてくれますが、スキルの低い翻訳者がアサインされる可能性もないわけではありません。
翻訳会社のなかには、「エコノミー」「スタンダード」「プレミアム」など、翻訳者のレベルごとに異なる料金プランを設けているところもあります。この場合、費用を抑えようと下位プランを選択すると、期待外れの翻訳文があがってくる可能性もあります。
▼デメリット02:業界・分野に詳しいとは限らない
専門性が高い文書ほど、翻訳者に専門知識が求められます。翻訳会社は数多くの翻訳者を抱えていますが、あらゆる業界・分野の実績を持つところは少なく、会社によって得意分野が変わってきます。そのため、外注した翻訳会社にその業界・分野に関する専門知識がない場合は、意図に沿わない翻訳文になってしまう可能性があります。
▼デメリット03:情報漏えいのリスクがある
翻訳を外注する際は、翻訳対象となる原文を外注先に提供します。社内から文書を持ち出すことになるので、当然、情報漏えいのリスクが高まります。契約書や新技術に関する文書など機密性の高い文書を翻訳するケースも多いため、機密保持契約を結ぶなどの対策が必要です。
翻訳を外注する際にかかる費用についてご説明します。
●翻訳料金を決める要素
翻訳会社によって料金の算出方法は異なりますが、一般的に翻訳料金を左右する要素として以下の4つが挙げられます。
01:翻訳原文のボリューム
翻訳料金は通常、翻訳原文の文字数・ワード数に比例します(詳しくは後述します)。翻訳原文の文字数・ワード数が多いほど翻訳料金は高くなり、文字数・ワード数が少ないほど翻訳料金は安くなります。この点は大前提として認識しておく必要がありますが、必ずしも「翻訳原文のボリュームが多ければ損」「翻訳原文のボリュームが少なければ得」とは言えません。
翻訳は、翻訳者の「慣れ」によって作業効率が上がっていきます。そのため、一定以上のボリュームで外注する場合、「ボリュームディスカウント」が適用になる翻訳会社も少なくありません。たとえば、2回に分けて外注するのではなく、1回にまとめてボリュームを多くして外注したほうが割引がきいてお得になる場合があります。
一方で、翻訳会社のなかには「ミニマムチャージ(最低料金)」を設けている会社もあります。ミニマムチャージは、「どれだけ翻訳原文のボリュームが少なくても、最低料金として◯円はいただきます」というルールです。そのため、一概に翻訳原文のボリュームを少なくすれば安上がりになるとは言えません。
02:翻訳原文の難易度
翻訳原文には様々な分野・ジャンルがあります。一般文書に比べると、専門性が高い文書のほうが翻訳難易度が高くなり、翻訳者には翻訳スキルに加えてその分野の専門知識が求められるようになります。翻訳原文の専門性が高くなるほど対応できる翻訳者が少なくなり、そのぶん翻訳料金も高くなる傾向にあります。
翻訳難易度が高い分野としては、以下のような分野が挙げられます。
・技術・工業(電機、電子、情報、通信、半導体、インフラ、環境、エネルギー、航空、宇宙 など)
・医療(医学、薬学、製薬、医療機器、バイオ、再生医療 など)
・法律(法律、規則、契約書、訴訟 など)
・金融・財務(銀行、証券、保険 など)
・特許・知的財産
なお、翻訳難易度が高い分野でも、翻訳会社によっては得意分野としているケースもあり、得意ではない会社に比べると安価に翻訳できることがあります。そのため、外注する前に翻訳会社の実績や得意分野を確認しておくことは重要です。
03:翻訳の納期
翻訳を外注する際、納期を短く設定すると、翻訳会社が翻訳者のスケジュールを確保するのが大変になり、場合によっては複数の翻訳者で分担するなど、オペレーションの負担が増加します。また、担当する翻訳者も通常よりもスピーディに作業する必要があり、負担が大きくなります。このような理由から、短納期の場合は特急料金が加算されるなど翻訳料金が高くなるのが通常です。できるだけ早めに翻訳準備をして、スケジュールに余裕を持って外注することで無駄なコストを節約できます。
04:翻訳のクオリティ・正確性
翻訳料金は、どのくらいのクオリティや正確性を求めるかによっても変わってきます。翻訳のクオリティは、翻訳者のレベルとチェック体制によって左右されます。豊富な実績を持つプロの翻訳者が担当すれば高い品質が期待できますが、たとえばキャリアの浅いアルバイトの翻訳者が担当すれば品質は低くなりがちです。
また、翻訳会社は「ダブルチェック」「ネイティブチェック」「ネイティブ2人チェック」など、様々なチェック体制を設けています。翻訳者以外の人がチェックをすることで、翻訳文の品質が高くなるのは言うまでもありません。
翻訳会社によっては「エコノミー」「スタンダード」「プレミアム」というように、翻訳者のレベルやチェック体制によっていくつかの料金プランを用意している会社もあります。なかには「チェックなし」を選択できる翻訳会社もあり、その場合は翻訳料金も安く抑えられますが、誤訳やスペルミスが起きやすいことは認識しておく必要があるでしょう。
- 翻訳料金の算出方法
翻訳料金は、翻訳する原文の「文字数(単語数) × 単価」で算出されるのが一般的です。単価は、原文が日本語や中国語であれば「1文字:◯円」という形で、原文が英語や欧州言語であれば「1単語(ワード):◯円」という形で決められています。単価は、言語の種類によって変わるほか、文書の分野や用途によっても変わってきます。
▼翻訳料金の目安
下記は、「一般社団法人 日本翻訳連盟」が公開している翻訳料金(翻訳発注価格)の目安です。英日翻訳の場合、原文の英語1ワードあたりの料金で、日英翻訳の場合は和文原稿1文字あたりの料金です。
文書の種類/分野 | 英日翻訳:英文→和訳(税別) | 日英翻訳:和文→英訳(税別) |
コンピューターマニュアル | 28円 | 20円 |
一般科学・工業技術 | 28円 | 21円 |
金融 | 30円 | 25円 |
経営管理・財務・契約書 | 30円 | 25円 |
医学・医療・薬学 | 35円 | 30円 |
特許明細書 | 26円 | 30円 |
この料金表を前提にすると、たとえば、3,000文字の日本語コンピューターマニュアルを英語に翻訳をする場合の翻訳料金は、20円 × 3,000文字 = 60,000円という計算になります。
なお、英語や中国語など翻訳ニーズの高い言語は単価が安めで、フランス語やスペイン語、トルコ語やロシア語など、マイナー言語になるほど単価が高くなるのが通常です。また、言語によっては日本語から翻訳するより英語から翻訳したほうが細かいニュアンスが伝わりやすいといったケースもあり、そうなると2段階で翻訳する必要があるため料金も納期も変わってきます。
- 特急料金
納期が急ぎの場合は、特急料金が加算されるのが一般的です。相場としては、トータルの翻訳料金の20%程度です。
- チェック料金
チェック料金はもともと翻訳料金に含まれている場合もありますが、ネイティブチェックやダブルチェックを希望する場合は、別料金(オプション料金)になるケースもあります。
- ミニマムチャージ(最低料金)
翻訳会社のなかには、ミニマムチャージを設定しているところもあります。仮にミニマムチャージが10,000円だとすると、原文が短くて翻訳料金が10,000円に満たない場合でも、請求は10,000円ということになります。なお、ミニマムチャージは「400文字」など、原文の文字数で規定されているケースもあります。
■翻訳を外注するうえで確認すべきポイントと注意点
翻訳を外注するうえで確認すべきポイントや注意点について、ご説明します。
- ポイント01:翻訳したい言語に対応しているか確認する
当然のことですが、翻訳を外注する際は、翻訳会社がその言語に対応しているかどうかを確認します。特に、多言語翻訳をする場合は、たとえばロシア語はA社に外注するけど、フィリピン語はB社に外注するというように外注先が別になってしまうのは避けるべきです。できるだけ翻訳したい言語すべてに対応できる1社に、まとめて依頼するようにしましょう。
- ポイント02:翻訳したい文書の分野に実績があるか確認する
翻訳をおこなう際、科学や技術、法律、金融、医療といった分野によって必要な知識が変わってきます。翻訳会社によって得意分野が異なるため、翻訳したい文書の業界・分野に対応できるかどうかを確認する必要があります。「その業界に精通した技術翻訳者がいるか?」「同じ分野、似た分野の翻訳実績はあるか?」などを質問して確認するようにしましょう。
- ポイント03:ネイティブチェック体制があるか確認する
契約書やマニュアルを翻訳するときは、正確で誤解のない翻訳ができるかどうかが重要です。Webサイトやパンフレットなどを翻訳するときは、魅力的で心に届く翻訳ができるかどうかが重要です。このように翻訳業務はクオリティを重視すべきですが、特にマイナー言語の場合、社内で品質をチェックできる人がいない会社がほとんどだと思います。
そうなると翻訳会社を信じるしかありませんが、一つの判断基準としたいのが「ネイティブチェック体制があるかどうか」ということです。ネイティブチェックとは、その言語を母語とする人が翻訳文を読んで、不自然なところや意味が違うところがないかをチェックすることです。品質重視の翻訳を求めるなら、ネイティブチェック体制を持った翻訳会社を選ぶべきでしょう。なお、ネイティブチェックをオプション扱いにしている翻訳会社もあるため、見積もりをもらう際は、料金に含まれているかどうかを確認しておきましょう。
- ポイント04:原文を絞り込み、確定させてから依頼する
たとえば、日本語で10,000文字の原文がある場合、すべての文章を翻訳する必要のないケースも多々あります。面倒だからと丸ごと翻訳するのではなく、翻訳が必要な文章だけに絞り込んで依頼すれば文字数が減ってコスト削減につながります。翻訳用に、短縮バージョンの原文を作るのもおすすめです。
また、原文の確定を待たずに翻訳を発注するのはNGです。発注してから「この一文を追加したい」「キャッチコピーが変更になった」といったケースは多々あります。もちろん引き受けてもらえますが、納期が遅延するうえ、上述したミニマムチャージの対象になる場合も少なくありません。スケジュール的にもコスト的にも負担が増えるだけなので、必ず原文が確定してから発注するようにしましょう。
- ポイント05:翻訳コーディネーターの対応を見極める
翻訳を外注する際は、翻訳者のスキルも重要ですが、「翻訳コーディネーター」との相性も重要です。翻訳コーディネーターとは、問い合わせ対応や翻訳者のアサイン、納品前のチェックなどをおこなう翻訳会社の担当者です。発注者が翻訳者とやり取りするケースはほとんどなく、通常は翻訳コーディネーターとやり取りします。
優秀な翻訳コーディネーターは、たとえば費用を削減する手立てを考えてくれたり、スケジュールを調整して納期を短縮してくれたりします。また、継続して発注する場合、翻訳者がその都度変わると品質にバラつきが出てしまいますが、柔軟に調整して毎回同じ翻訳者をアサインしてくれるなど、できるだけ発注者の要望に応えようとしてくれます。問い合わせの際は翻訳コーディネーターに気になることを聞いてみて、どんな対応をしてくれるのか見極めるようにしましょう。
翻訳を外注してから納品されるまでの流れをご説明します。
- Step01:翻訳会社を選ぶ
まずは、外注する翻訳会社を選定します。上述のとおり、実績や得意分野、チェック体制などが主な判断基準になるでしょう。翻訳会社によっては無料で少量の原文を翻訳する「トライアル」に対応しているところもあります。事前に品質を確認したいときは、トライアルを利用するのもいいでしょう。
- Step02:見積もりをもらう
翻訳会社を選んだら、見積もりの依頼をします。翻訳会社のホームページには通常、料金表があるので、翻訳する原文の「文字数(単語数) × 単価」でおおよその翻訳料金は分かります。ですが、文書の内容や納期によって翻訳料金が変わるケースがあるので、実際に翻訳する原文を送って正式な見積もりをもらいましょう。
- Step03:発注する
見積もりに合意したら、正式に発注します。特に品質にこだわる場合は、翻訳者が参考にできるような資料やサンプルを提供することもあります。また、使ってはいけない用語や表記に関するルールがある場合は、レギュレーションを提供しましょう。
- Step04:検収する
翻訳が完了したら、翻訳文が納品されます。確認して不備などがあれば修正依頼をします。問題がなければ検収の連絡をしましょう。
■まとめ~翻訳会社とのパートナーシップでグローバルなビジネスを
翻訳業務を外注することで、クオリティの高い翻訳が可能になります。ですが、外注先の選定を誤ってしまうと、必ずしも品質の高い翻訳をしてもらえるとは限りません。実績や得意分野、チェック体制などを確認したうえで最適な翻訳会社を選定しましょう。
また最近では、フリーランスとして活躍する翻訳者も増えています。日英翻訳や日中翻訳など、翻訳する言語が限定されている場合や、翻訳料金を抑えたいとき、また社内に翻訳文をチェックできる人材がいる場合などは、フリーランスの翻訳者を活用するのもおすすめです。
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