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納品書と請求書の違いとは?書類に関する注意点や役割について

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企業とフリーランスの取引においては、様々な書類をやり取りします。発注する企業側も発注を受けるフリーランス側も、各書類の役割や発行する意味をしっかり認識したうえで取引をしないと、後にトラブルを招く原因になってしまいます。今回は、「納品書」と「請求書」にフォーカスして、それぞれの役割や違いなどを解説していきます。


 

■取引の流れにおける発行書類を知る!

納品書や請求書の役割を理解するために、前提として、一般的な取引の流れとそれぞれの段階で発行される書類についておさらいしておきましょう。

「A社がフリーランスデザイナーであるBさんにWebデザインを依頼するケース」を前提に、企業とフリーランスの取引の流れをご説明します。ただし、以下はあくまでも一般的な流れであり、発注する企業とフリーランスの関係性や発注する業務内容によっては異なるフローで取引を進めるケースもあります。

●01:見積依頼(A社→Bさん)

A社がBさんに対して見積依頼をします。

●02:見積書を発行(Bさん→A社)

見積依頼を受けたBさんは、A社に「見積書」を発行します。見積書とは、製品やサービスの金額や取引条件を、取引に先んじて相手方に提示するための書類です。見積書には、以下のような特徴・役割があります。

▼取引の判断材料になる

Webデザインの発注を検討しているA社からすると、Bさんに見積書を発行してもらうことで、Bさんに発注した場合の「費用」を把握できます。見積書は、Bさんに発注するかどうかを決めるための重要な判断材料になり、社内で承認を得るためにも用いられます。

▼相場を把握できる

A社は、BさんのほかにCさんやDさんにも見積依頼をすることがあります(相見積もり)。A社は複数のフリーランスに見積書をもらうことで、Webデザイン費用の相場を知ることができます。相場を把握したうえで比較検討しながら発注するデザイナーを選べるのは、相見積もりをするメリットです。

▼取引のきっかけになる

フリーランスのBさんの立場からすると、見積書の発行を依頼されたということは、A社から発注してもらうチャンスがあるということ。見積書で提示した費用や取引条件がA社のニーズにマッチすれば、自分に発注してもらえる可能性が高くなります。

▼トラブルを回避できる

もし、A社がBさんから見積書を発行してもらうことなく、口約束ベースで取引を進めるとします。このような場合は、発注内容や報酬、納期などについて認識違いが生じてトラブルが起こりがちです。法的には、「必ず見積書を発行しなければならない」というルールはありませんが、見積書があることによって当事者双方が一定の共通認識を得られ、後のトラブル防止につながります。

●03:注文書を発行(A社→Bさん)

A社がBさんの見積書を見て検討した結果、Bさんに発注することを決めたら、「注文書」を発行します。注文書とは、相手方に対して「あなたに発注します」という意思表示をする書面のことで、「発注書」と呼ばれることもあります。注文書には、以下のような特徴・役割があります。

▼下請法で発行が義務付けられている

下請法が適用になる取引においては、親事業者から下請事業者へ発注内容を明確に記載した注文書などの書面を交付することが義務付けられています。下請法は、フリーランスなど下請事業者の利益保護を図ることを目的とした法律です。

下請法については、以下の記事で詳しく解説しています。

▼トラブルを防止できる

たとえば、資本金が1,000万円以下の企業がフリーランスと取引をする場合は、下請法が適用になりません。したがって、企業側は注文書を発行する義務はありません。しかし、下請法が適用にならない取引でも注文書を発行しておいたほうが安心です。

なぜなら、注文書には取引条件などの発注内容について「証拠を残す」役割があるからです。注文書を発行していれば、納品後に「これは発注した内容と違う!」「注文されたとおりに納品している!」といった認識違いが起きるリスクを回避できます。

▼フリーランスに安心してもらえる

個人事業主であるフリーランスは、企業との取引において不安定な立場に置かれがちです。「近いうちに発注すると言われたけど、全然連絡が来ない・・・」「もしかして、別のフリーランスに発注したのだろうか・・・」など、様々な不安を抱えているものです。

注文書は「あなたに発注したい」という意思を明確にする書面です。フリーランスから見ると「発注の確約」とも言えるもので、大きな安心材料になります。フリーランスに安心して仕事に取り組んでもらうためには、下請法適用の有無にかかわらず注文書を発行したほうがいいでしょう。

注文書の書き方については、以下の記事で詳しく解説しています。

 

●04:注文請書を発行(Bさん→A社)

A社から注文書を受け取ったBさんは、その申込みを受ける場合、A社に「注文請書」を発行します。注文請書とは、相手方からの発注の意思表示に対し、それを「引き受ける」という承諾の意思表示をする書面のことで、「発注請書」と呼ばれることもあります。注文請書には、以下のような特徴・役割があります。

▼契約が成立することがある

民法上、契約が成立するには、当事者間で「申込み」と「承諾」の意思表示が必要だとされています。申込みと承諾があることで、双方の意思が合致したとして契約が成立するわけです。

一般的には、当事者双方が契約書を交わして署名・押印することで契約が成立しますが、「注文書と注文請書がセットになること」でも契約が成立するケースがあります。申込みの意思表示である注文書に対して、承諾の意思表示である注文請書が発行されれば、双方の意思の合致が明確になり、契約書と同じ効力があると考えられるからです。

●05:納品書を発行(Bさん→A社)

Bさんは、A社から発注されたWebデザインが完了したら、A社に成果物を納品します。このときに、「納品書」を発行する場合があります。納品書とは、商品や成果物を納品する際に発行する書類のことです。納品書の詳細は後述します。

●06:検収書を発行(A社→Bさん)

Bさんから納品を受けたA社は、成果物に不備などがないことを確認します。いわゆる「検収」という工程です。検収が完了したら、「検収書」を発行する場合があります。検収書には、以下のような特徴・役割があります。

▼発注内容どおりに納品したことの証明になる

検収書は、納品された商品や成果物が発注内容どおりかを検査し、「問題ない」と認めたことを通知するための書面です。つまり、検収書があることで発注内容どおりに納品したことの証明になります。原則として、発注者は検収書の発行後は、受注者に対してクレームを言ったり修正を求めたりすることができなくなります。

▼請求書発行の手続きへ移ることができる

通常、検収書が発行されたら、当該案件は問題なく納品・検収が完了したことになります。請求書を発行すべきタイミングにルールはありませんが、実務上、後払いのケースであれば、検収の完了(検収書の発行)をもって請求書が発行されるのが一般的です。

●07:請求書を発行(Bさん→A社)

A社による検収が完了したら、BさんはA社に「請求書」を発行します。請求書とは、商品やサービスを提供した際に、その対価を支払ってもらうために発行する書面のことです。請求書の詳細は後述します。

●08:領収書を発行(Bさん→A社)

請求書を受け取ったA社はBさんに報酬を支払います。支払いを受けた側は、「領収書」を発行する場合があります。領収書は、代金を支払ったことを証明するために、代金を受け取った側に発行してもらう書面です。領収書には、以下のような特徴・役割があります。

▼代金を支払う側は領収書の発行を求めることができる

「領収書を必ず発行しなければならない」というルールはありませんが、代金を支払う側は、代金を受け取る側に対して領収書を発行するように求めることができます(民法486条)。しかし、実務上は支払い方法が現金以外であれば、領収書の発行は省略されるケースがほとんどです。

▼「支払った・支払ってない」のトラブルを防止できる

上述のとおり、領収書は代金を支払ったことを証明するために、代金を受け取った側に発行してもらう書面です。領収書を持っていれば相手方に代金を支払った証になるため、「支払った・支払ってない」のトラブルを防止できます。逆に、領収書を紛失してしまうと、代金を支払った旨を証明できなくなってしまいます。

▼経費計上の際に用いられる

領収書は法人や個人事業主が確定申告をする際、いわゆる「経費で落とす」ために使用されます。なお、領収書があることが、経費として計上するための絶対条件ではありません。

領収書の書き方については、以下の記事で詳しく解説しています。



■請求書とは?

請求書とは、受注者側が発注者側に成果物や役務サービスなどの報酬を請求する際に発行する書面のこと。請求書の発行義務はありませんが、日本の商習慣においては発行するのが通例となっています。

●請求書の書き方

請求書の書き方にルールはありませんが、慣例的に記載する項目は決まっています。請求書の基本的な記載項目は以下のとおりです。

・発行者
・宛名(請求書を受け取る取引先)
・日付
・取引内容
・取引金額
・支払期日
・振込先
請求書の書き方や記載項目に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

●請求書の保管期間

請求書は取引の証拠となる証憑(しょうひょう)書類にあたるため、一定期間の保管が義務付けられています。自社が発行した請求書の控えも、取引先から受け取った請求書も、決められた期間は保管しておかなければいけません。

請求書の保管期間は、法人か個人事業主かによって異なります。法人における請求書の保管期間は、原則として7年間です(例外として、9年間・10年間になるケースもあります)。一方、個人事業主における請求書の保管期間は、原則として5年間です(例外として、7年間になるケースもあります)。

請求書の保管方法は、「紙での保管」のほか「電子データでの保管」も認められています。近年は、ペーパーレスによる業務効率化やコスト削減のために、請求書を電子化し、電子データで保管する企業が増えています。

請求書の保管期間や保管方法、また請求書を電子化するメリットなどは、以下の記事で詳しく解説しています。

■納品書とは?

納品書は、受注者側から発注者側に商品や成果物を納品する際に発行する書面のことです。法的には納品書を発行する義務はありませんが、慣例的に納品書が発行されるケースは少なくありません。

納品書には通常、納品された商品や成果物に関する明細が記されます。納品書を発行することで、発注者に対して「注文された内容どおりに納品したこと」を証明する意味があります。発注者側は、納品物と納品書を照合することで、注文した内容どおりに納品されているかどうかを確認することができます。

●納品書の書き方

納品書の記載事項を直接定める規定は存在しません。ただし、消費税法では仕入税額控除を受ける要件として納品書などの保存を求めており、以下のとおり、記載事項を定めています。

・発行者
・発行日
・納品内容
・合計金額
・宛名

納品書にこの5項目の記載があれば、「いつ、誰が、誰に対し、何を納品して、それがいくらなのか」を明確にできます。

納品書の書き方や記載項目に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

 

●納品書の保管期間

納品書は取引の証拠となる証憑(しょうひょう)書類にあたるため、請求書と同様に一定期間の保管が義務付けられています。自社が発行した納品書の控えも、取引先から受領した納品書も、決められた期間は保管しておかなければいけません。

納品書の保管期間は、法人か個人事業主かによって異なります。法人における納品書の保管期間は、原則として7年間です(例外として、9年間・10年間になるケースもあります)。一方、個人事業主における納品書の保管期間は、原則として5年間です(例外として、7年間になるケースもあります)。

納品書の保管方法は、「紙での保管」のほか「電子データでの保管」も認められています。近年は、ペーパーレスによる業務効率化やコスト削減のために、納品書を電子化し、電子データで保管する企業が増えています。

納品書の保管期間や保管方法に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

■「納品書 兼 請求書」を発行するケースとは?

納品書を発行するタイミングは、原則として商品を納品するとき、もしくは商品を出荷・発送するときです。一方、請求書を発行するタイミングは、当事者間の取り決めによって変わってきます。

納品書も請求書も、受注者側から発注者側へ発行される書面です。そのため、この2種類の書面をわざわざ分けて発行する必要がないときは、便宜1枚にまとめた「納品書 兼 請求書」を発行することがあります。

たとえば、物理的に納品する物がなく役務サービスを提供する場合などは、納品と同時に請求をおこなう形にして「納品書 兼 請求書」を発行することができるでしょう。2種類の書面を1枚にまとめることで、後日、請求書を作成して郵送する手間やコストを削減できます。

■納品書と請求書の主な違い

納品書と請求書は、主に以下の2点において異なっています。

●目的や役割が違う

納品書の目的は、納品した事実とその納品内容を明らかにすることです。受注者側は発注者側に、「納品物は納品書に記載のとおりです」と明確に伝えることができます。発注者側は、納品書を見ることで発注した内容と納品物が一致しているかどうかを確認することができます。

請求書の目的は、受注者側が発注者側に代金の支払いを請求することです。なお、発注者側は請求書が発行されていなくても、取引が完了しているのであれば代金を支払う義務があります(請求書が未着のまま支払いをしても構いません)。しかし、実務上は請求書を発行しないと支払いがなされないケースもあるので、受注者側は円滑な代金回収のために請求書を発行するのが一般的です。

●発行時期が違う

納品書は通常、納品と同時に発行します。商品を納品した場合は、商品に同梱するのが一般的です。商品ではなく役務サービスを提供した場合は、指定の業務を終えたタイミングで納品書を発行することがあります。

請求書の発行時期は、当事者間の取り決めによって変わってきます。前払いであれば、商品や役務の提供前に請求書を発行しますし、後払いであれば、納品後、発注者側の締日に合わせて発行するのが一般的です。

■納品書や請求書は発行する義務がある?

納品書や請求書は、成果物の提供や代金の請求などの状況を明確にする書面であるとともに、保管することが義務付けられている書面でもあります。しかしながら、いずれも必ず発行しなければいけないという法的根拠はありません。

納品書は、業界の慣例や商品・成果物の内容などによっては発行しないケースも多いと思います。取引開始前に「納品書を発行するかどうか」を当事者間で確認しておくことが重要です。

請求書は、多くの取引で発行されていると思いますが、こちらも取引開始前に「請求書を発行するかどうか」を確認するとともに、発行する場合は「タイミング」「送り先」「締め日」「必着日」などを当事者間で確認しておくことで、スムーズに取引を進められます。

■まとめ~無用なトラブルを避けるため納品書・請求書は正しく発行しよう

ビジネスでは、書類ひとつで信頼関係が崩れてしまうことがあります。特に、フリーランスなどの個人事業主は、各種書類に関する知識に乏しい人も多いので、「分かっているはず」で取引を進めてしまうのは危険です。無用なトラブルを避けるためには、発注企業側が正しい知識を持つことはもちろん、フリーランス側にアドバイスをするなど正しい理解を促す姿勢も大切です。

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