領収書に貼る収入印紙のルールや金額別の印紙税一覧
私たちが普段よく目にする領収書は、収入印紙が貼られていないものがほとんどです。しかし、一定の要件を満たしている領収書には規定額の収入印紙を貼る必要があります。特にビジネスシーンでは、領収書に収入印紙を貼るべきケースが少なくありません。
本来、収入印紙を貼るべき領収書に収入印紙が貼られていないと、発行した側がペナルティを被るだけでなく、取引先や顧客に迷惑をかけてしまうかもしれません。領収書に貼る収入印紙に関するルールは正確に押さえておきましょう。
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■収入印紙とは
収入印紙は、主に印紙税を納めるときに用いられる証票で、切手のように裏面に糊が付いています。
印紙税法では、印紙税を納付すべき課税文書が定められおり、課税文書を作成する際は規定額の収入印紙を貼り付けなければいけません。課税文書を作成する際は、作成当事者に経済的な利益が生じていると考えられるため、その経済的利益に対して税金が課されるというロジックです。領収書は代表的な課税文書の一つですが、すべての領収書が課税文書になるわけではありません。そのあたりは「領収書に収入印紙が必要なケースは?」「領収書に収入印紙が不要なケースは?」で解説します。
■領収書に収入印紙が必要なケースは?
領収書は、印紙税法で定められている課税文書のなかの「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書(17号文書)」に該当します。そのため、原則として収入印紙を貼る必要があります。しかし、領収書に記載された受取金額が5万円未満であれば非課税文書となります。つまり、「受取金額が5万円以上の領収書には収入印紙を貼る必要がある」ということです。
■領収書に収入印紙が不要なケースは?
印紙税法上、原則的に領収書には収入印紙を貼る必要があります。しかし、上述のとおり、受取金額が5万円未満の領収書は非課税文書になるため、収入印紙は不要です。この他にも、以下のような領収書は受取金額が5万円以上でも収入印紙を貼る必要はありません。
電子データで作成された領収書
電子データで作成された領収書には印紙税が課せられません。なぜなら、印紙税法は紙の文書を課税対象としており、電子文書は課税対象となっていないからです。近年、領収書の電子化が進んでいますが、PDFなどで作成された領収書に収入印紙を貼る必要はありません。
クレジットカード取引の領収書
クレジットカード取引では、金銭や有価証券のやり取りが発生しません。そのため、クレジットカード取引における領収書は印紙税法の17号文書には該当せず、収入印紙も不要です。なお、電子マネー取引の場合は金銭のやり取りがあったとみなされるため、5万円以上の領収書であれば収入印紙を貼る必要があります。
営業に関しない領収書
営業に関しない領収書(受取書)は非課税とされているため、収入印紙の貼り付けも不要です。ここで言う「営業」とは、利益を得る目的で同種の行為を反復継続することを言います。たとえば、個人が財産を譲渡した際に作成する領収書などは、営業に関しない領収書として非課税となります。
※参考:No.7125 営業に関しない受取書|国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7125.htm
■領収書に貼る収入印紙の金額一覧
領収書に貼るべき収入印紙の金額は以下のとおりです。領収書の記載金額が高くなるほど、必要な収入印紙の金額も高くなります。
記載金額 | 税額 | |
5万円未満のもの | 非課税 | |
5万円以上 | 100万円以下のもの | 200円 |
100万円を超え | 200万円以下のもの | 400円 |
200万円を超え | 300万円以下のもの | 600円 |
300万円を超え | 500万円以下のもの | 1,000円 |
500万円を超え | 1,000万円以下のもの | 2,000円 |
※参考:No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7105.htm
領収書の金額は消費税別で考える
印紙税の課税対象になる領収書の金額は、消費税別の金額で考えます。つまり、消費税込みでは5万円以上であるものの、消費税別では5万円未満になる領収書には収入印紙を貼る必要はありません。
ただし、この場合は領収書に消費税別の金額が5万円未満であることが明記されている必要があります。たとえば、「総額52,800円(本体価格48,000円/消費税額4,800円)」と記載された領収書であれば、収入印紙は不要です。
収入印紙そのものに消費税はかかる?
郵便局、郵便切手類販売所(コンビニも含む)、印紙売りさばき所で収入印紙を購入する場合は非課税です。ただし、金券ショップで収入印紙を購入する場合は消費税が課税されます。
■領収書に収入印紙を貼るべきタイミングは?
領収書に収入印紙を貼るべきタイミングは、国税庁のWebサイトの質疑応答(課税文書の作成時期及び作成者)で示されています。以下、質疑応答から引用します。
Q:課税文書を作成した場合、どの時点で印紙を貼るのでしょうか。
A:印紙税は、課税文書を作成した時に納税義務が成立し、その作成者が納税義務を負うことになります。ここにいう「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのではなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これをその文書の目的に従って行使することをいいます。ですから、課税文書の「作成の時」(納税義務の成立の時)は、その行使の態様により、それぞれ次のとおりになります。
行使の態様 | 作成の時 | 例示 |
相手方に交付する目的で作成される課税文書 | 交付の時 | 手形、株券、出資証券、社債券、預貯金証書、倉荷証券、船荷証券、保険証券、配当金領収書、受取書、請書、差入書 |
例示されている受取書は領収書のことなので、領収書は「交付の時」に収入印紙を貼るべきだということが分かります。
※参考:課税文書の作成時期及び作成者|国税庁
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/05/01.htm
■領収書に貼る収入印紙に関するよくある質問
領収書に貼る収入印紙についてのよくある質問をご紹介します。
Q:領収書に収入印紙を貼り忘れたらどうなる?
収入印紙が必要な領収書であるにもかかわらず収入印紙が貼られていない場合は、印紙税法違反になります。この場合、過怠税として本来納めるべきであった印紙代の3倍の支払いが課せられます。たとえば記載金額が400万円の領収書には1,000円の収入印紙が必要ですが、印紙を貼り忘れた場合は過怠税が加算され合計3,000円の支払いが必要になります。
Q:領収書に貼った収入印紙に消印を忘れたらどうなる?
領収書などの課税文書に貼った収入印紙には消印を押す必要があり、消印を押してはじめて印紙税を納税したことになります。収入印紙を貼っていても消印が押されていなければ納税したと認められず、過怠税が課せられる場合があります。消印がない場合の過怠税の金額は、貼り付けた収入印紙と同額です。
なお、収入印紙に消印が求められるのは、再使用を防止する意味合いもあります。消印がない収入印紙は剥がしたり切り取ったりして再使用できますが、消印があればその心配はありません。
Q:6万円の領収書を3万円の領収書2枚に分割すれば、収入印紙を貼らなくてもいい?
上述した「収入印紙の金額一覧」を見ると、6万円の領収書には200円の収入印紙が必要だということが分かります。しかし、1枚の領収書の記載金額が5万円未満であれば印紙税は課税されません。そのため、6万円の領収書を3万円の領収書2枚に分割して発行すれば、収入印紙を貼る必要はなくなります。
Q:領収書に間違えて貼ってしまった収入印紙は返金してもらえる?
領収書に収入印紙を多く貼ってしまった場合や、収入印紙を貼る必要のない領収書に収入印紙を貼ってしまった場合などは、所定の手続きをおこなうことで返金してもらえます。具体的には、税務署で「印紙税過誤納確認申請書」を記入して、誤って収入印紙を貼ってしまった領収書と合わせて提出します。
Q:領収書に貼る収入印紙はどこで買える?
収入印紙は全国の郵便局で購入できるほか、コンビニや法務局、金券ショップなどでも購入できます。なお、収入印紙そのものには消費税はかかりませんが、上述のとおり、金券ショップで購入した収入印紙には消費税がかかるので、会計処理の際に注意が必要です。
Q:領収書に貼る収入印紙代は経費にできる?
収入印紙は、使用したときに経費として計上することができます。収入印紙の勘定科目は「租税公課」を使うのが一般的です。
Q:領収書の収入印紙代は誰が負担すべき?
領収書に貼る収入印紙代は、領収書を発行する側が負担します。取引先からの要望で領収書を発行するケースもあると思いますが、その場合でも収入印紙代は領収書を発行する側が負担します。
■まとめ~領収書を電子化して印紙税の節約を
領収書や請求書などのビジネス文書は、紙からデータへの移行が進んでいます。企業が業務効率化を推進するうえで、ビジネス文書のペーパーレス化はもはや必須の取り組みだと言えるでしょう。領収書に関しては本編でお伝えしたとおり、電子データで発行することで印紙税が非課税になるので、コスト削減の観点でも有効な取り組みになります。
領収書の書き方などは以下の記事で詳しく解説しています。
>> 【領収書の書き方のすべて】必要項目と収入印紙まで徹底解説
https://www.pasture.work/news/write-receipt/