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下請法とは?発注者側の義務と禁止事項を解説

外注業者やフリーランス・個人事業主を活用する企業が増えていますが、その際に遵守すべき「下請法」について正しく理解している担当者様は意外と少ないかもしれません。下請法に違反すると、罰金の可能性があるだけでなく、企業名や違反事実が公正取引委員会のWebサイトに「さらされる」ケースもあります。企業価値を損なうことのないよう、ぜひ下請法の内容を正しく理解しておきましょう。

 

 

■下請法とは?

下請法とは、経済的に優越した地位にある親事業者(発注者)の濫用行為を規制することにより、下請取引の公正化を図るとともに、下請事業者(受注者)の経済的利益を保護することを目的とした法律です。端的に言えば、「下請けいじめ」を防止するための法律ということになるでしょうか。詳しくは後述しますが、親事業者による支払い遅延や不当な値引きなどを規制することで、下請事業者が経済的な不利益を被らないようにしています。

たとえば・・・

・下請事業者に責任がないのに、親事業者が発注後に下請代金の額を減じることはできません。

・下請事業者に責任がないのに、費用を負担せずに、発注の取消しや内容変更、やり直しをさせることはできません。

・親事業者の事務手続の遅れや、下請事業者から請求書が提出されていないことを理由に、下請代金の支払日を遅らせることはできません。

  • 下請法における「親事業者」「下請事業者」に該当するのは?

下請法が適用になる下請取引は、取引当事者の資本金と取引の内容(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託)から、以下のように定められています。

 

<親事業者、下請事業者の定義>


下請法の対象になる取引

下請法の対象になる取引は、「製造委託」「修理委託」「情報成果物作成委託」「役務提供委託」の4つです。それぞれ、具体的にどんな取引が該当するのかをご説明します。

  • 製造委託

製造委託とは、物品を販売する事業者、または物品の製造を請け負っている事業者が、規格・品質・形状・デザイン・ブランドなどを指定して、他の事業者に物品の製造や加工などを委託する取引です。製造委託は、下記の4つのパターンに分類できます。

① 物品の販売をおこなう事業者が、その物品や部品などの製造を他の事業者に委託する場合
例)自動車メーカーが、自動車の部品の製造を部品メーカーに委託する

② 物品の製造を請け負う事業者が、その物品や部品などの製造を他の事業者に委託する場合
例)精密機器メーカーが、受注生産する精密機械に用いる部品の製造を部品メーカーに委託する

③ 物品の修理をおこなう事業者が、その物品の修理に必要な部品や原材料の製造を他の事業者に委託する場合
例)家電メーカーが、販売した製品の修理用部品の製造を部品メーカーに委託する

④ 自社で使用・消費する物品を社内で製造している事業者が、その物品や部品などの製造を他の事業者に委託する場合
例)製品運送用の梱包材を自社で製造している精密機器メーカーが、その梱包材の製造を資材メーカーに委託する

  • 修理委託

修理委託とは、修理を請け負った物品や、自社で修理している物品の修理を他の事業者に委託する取引です。修理委託は、下記の2つのパターンに分類できます。

① 物品の修理を業として請け負っている事業者が、修理行為の全部または一部を他の事業者に委託する場合
例)自動車ディーラーが請け負った自動車の修理作業を修理会社に委託する

② 自社で使用する物品を自社で修理している事業者が、その物品の修理行為の一部を他の事業者に委託する場合
例)自社工場の設備を社内で修理している工作機器メーカーが、その設備の修理作業を修理会社に委託する

  • 情報成果物作成委託

情報成果物作成委託とは、プログラムやコンテンツなどの情報成果物の作成を、他の事業者に委託する取引です。情報成果物の例としては、TVゲームソフト、会計ソフトなどのプログラム、映画や放送番組、アニメなど、また設計図やポスターのデザインなどが挙げられます。情報成果物作成委託は、下記の3つのパターンに分類できます。

①情報成果物を業として提供している事業者が、その情報成果物の作成の行為の全部または一部を他の事業者に委託する場合
例)ソフトウェアメーカーが、ゲームソフトや汎用アプリケーションソフトの開発を他のソフトウェアメーカーに委託する

②情報成果物の作成を業として請け負っている事業者が、その情報成果物の作成の行為の全部または一部を他の事業者に委託する場合
例)広告会社がクライアントから受注したCM制作をCM制作会社に委託する

③自社で使用する情報成果物の作成を業としておこなっている場合に、その作成の行為の全部または一部を他の事業者に委託する場合
例)家電メーカーが自社のシステム部門で作成している自社用経理ソフトの作成の一部を、ソフトウェアメーカーに委託する場合

  • 役務提供委託

役務提供委託とは、役務の提供を業としておこなっている事業者が、その提供の行為の全部または一部を他の事業者に委託する取引のことです。

例)自動車メーカーが、販売した自動車の保証期間内のメンテナンス作業を自動車整備会社に委託する
例)貨物運送業者が請け負った貨物運送業務のうち、一部経路の業務を他の事業者に委託する

なお、役務提供委託は、自社が顧客に提供するサービスを他社に再委託するケースに限って適用され、自社が自らサービスを利用する場合は含まれません。たとえば、荷主から貨物運送の委託のみを請け負っている場合、自らの運送作業に必要な梱包作業を他の事業者に委託する取引は、下請法上の役務提供委託に該当しません。


下請法が適用されるケース

下請法が適用されるのは、上述した4つの取引を、資本金の大きい会社が資本金の小さい会社や個人事業主に委託する場合です。具体的には、以下の2つのケースを押さえておきましょう。

  • ケース01

以下のいずれかの取引を自社で請け負い、それを他の事業者に再委託する場合、発注者と受注者の資本金の金額によっては下請法が適用になります。

・製造委託
・修理委託
・プログラムの作成委託
・運送・倉庫保管・情報処理の委託

▼発注者の資本金が3億1円以上である

資本金が3億円以下の会社、または個人事業主に発注する場合は下請法が適用になります。

▼発注者の資本金が1千万1円以上である

資本金が1千万円以下の会社、または個人事業主に発注する場合は下請法が適用になります。

  • ケース02

以下のいずれかの取引の委託取引をおこなう場合、発注者と受注者の資本金の金額によっては下請法が適用になります。

・放送番組や広告の制作、商品デザイン、製品の取扱説明書、設計図面などの作成など、プログラム以外の情報成果物の作成
・ビルや機械のメンテナンス、コールセンター業務などの顧客サービス代行など、運送・物品の倉庫保管・情報処理以外の役務の提供

▼発注者の資本金が5千万1円以上である

資本金が5千万円以下の会社、または個人事業主に発注する場合は下請法が適用になります。

▼発注者の資本金が1千万1円以上である

資本金が1千万円以下の会社、または個人事業主に発注する場合は下請法が適用になります。


■下請法における発注者側(親事業者)の義務

下請法では、発注者側(親事業者)に4つの義務を課しています。

  • (1)書面の交付義務(第3条)

口頭での発注によるトラブルを防止するため、親事業者は発注に際して発注内容を明確に記載した書面(3条書面)を下請事業者に交付する義務があります。

3条書面の記載事項は、「下請事業者の給付の内容」「下請事業者の給付を受領する期日」「下請代金の額」「下請代金の支払期日」などの12項目が定められています。詳細は、公正取引委員会のWebサイトでご確認ください。

>> 親事業者の義務:公正取引委員会

  • (2)支払期日を定める義務(第2条の2)

親事業者は、検査をするかどうかを問わず、発注した物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で下請代金の支払期日を定める義務があります。支払期日を定めなかった場合などは、以下のように支払期日が法定されています。

・当事者間で支払期日を定めなかったときは、物品等を実際に受領した日

・当事者間で合意された取決めがあっても、物品等を受領した日から起算して60日を超えて定めたときは、受領した日から起算して60日を経過した日の前日

  • (3)遅延利息の支払義務(第4条の2)

親事業者が下請代金を支払期日までに支払わなかったときは、下請事業者に対し、物品等を受領した日から起算して60日を経過した日から実際に支払をする日までの期間、その日数に応じ下請事業者に対して遅延利息(年率14.6%)を支払う義務があります。

  • (4)書類の作成・保存義務(第5条)

親事業者は、下請取引が完了したら取引に関する記録を書類(5条書類)として作成し、2年間保存する義務があります。5条書類の記録事項は、「下請事業者から受領した給付の内容及び給付を受領した日」「支払った下請代金の額、支払った日及び支払手段」などの17項目が定められています。詳細は、公正取引委員会のWebサイトでご確認ください。

>> 親事業者の義務:公正取引委員会


■下請法における発注者側(親事業者)の禁止行為

下請法では、発注者側(親事業者)による成果物の受領拒否や下請代金の減額、下請代金の支払遅延など11項目の行為を禁止しています。仮に下請事業者の了解を得ていても、また親事業者に違法性の認識がなくても、以下の禁止行為をおこなうと下請法違反となります。

①受領拒否

注文した物品等の受領を拒むこと。

②下請代金の支払遅延

下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないこと。

③下請代金の減額

あらかじめ定めた下請代金を減額すること。

④返品

受け取った物を返品すること。

⑤買いたたき

類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること。

⑥購入・利用強制

親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること。

⑦報復措置

下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由としてその下請事業者に対して、取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること。

⑧有償支給原材料等の対価の早期決済

有償で支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること。

⑨割引困難な手形の交付

一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。

⑩不当な経済上の利益の提供要請

下請事業者から金銭、労務の提供等をさせること。

⑪不当な給付内容の変更及び不当なやり直し

費用を負担せずに注文内容を変更し、又は受領後にやり直しをさせること。

※ 引用:親事業者の禁止行為:公正取引委員会


■下請法に違反したときの罰則

公正取引委員会や中小企業庁では、毎年、親事業者・下請事業者に対する書面調査を実施しているほか、必要に応じて、親事業者の保存している取引記録の調査や立入検査をおこなっています。また、インターネット上などで下請法違反の申告を受け付けており、下請事業者からの申告によって違反行為が発覚するケースも少なくありません。

下請法違反があった場合は勧告・公表がおこなわれ、最高で50万円の罰金が科せられます。

  • 勧告・公表

公正取引委員会は、親事業者が下請法に違反した場合、それを取り止めて原状回復させること(減額分や遅延利息の支払い等)を求めるとともに、再発防止などの措置を実施するよう、勧告・公表をおこなっています。企業名や違反内容がホームページで公表されるため、親事業者の社会的信頼が大きく損なわれる可能性があります。

▼代金減額分などの返還

親事業者に代金減額や不当返品などの下請法違反があった場合、代金減額分などを下請事業者に返還するよう指導・勧告がおこなわれます。令和元年度においては、下請事業者が被った不利益につき、親事業者268名から下請事業者7,469名に対し、総額で27億7,651万円相当の返還、原状回復がおこなわれました。

▼自発的に申し出た場合

親事業者が自発的に下請法違反の事実を公正取引委員会に申し出た場合、自発的申出について審査をおこなった結果、以下の要件を満たしていると認められた場合には勧告がおこなわれないことになります。

 

  1. 公正取引委員会が当該違反行為に係る調査に着手する前に、当該違反行為を自発的に申し出ている。
  2. 当該違反行為をすでに取りやめている。
  3. 当該違反行為によって下請事業者に与えた不利益を回復するために必要な措置(※)をすでに講じている。

※ 下請代金を減じていた事案においては、減じていた額の少なくとも過去1年間分を返還している。

  1. 当該違反行為を今後おこなわないための再発防止策を講じることとしている。
  2. 当該違反行為について公正取引委員会がおこなう調査および指導に全面的に協力している。

 

※ 参考:下請法違反行為を自発的に申し出た親事業者の取扱いについて|公正取引委員会

  • 50万円以下の罰金

親事業者が、発注書面を交付する義務、取引記録に関する書類の作成・保存義務を守らなかった場合は、違反行為をした本人(発注をした企業担当者)のほか、企業も50万円以下の罰金に処せられます。


■まとめ~下請法で発注者側が取り組むべきこと~

下請法に違反してしまうと、企業の社会的評価は著しく損なわれ、甚大な不利益を被ることになります。

下請法を守って公正な取引をおこなっていくには、あらためて発注者側の心構えを正す必要があるかもしれません。発注担当者に「発注者=強者、下請け=弱者」といった意識が少しでもあると、それが下請法違反の引き金になってしまいます。下請事業者とは、対等なビジネスパートナーという意識で関係を構築していくことが大切です。

そのうえで、下請法をしっかりと理解し、「契約書に下請法に違反する内容が含まれていないか?」「発注書は下請法に則って作成されているか?」など、ガイドラインを作成してオペレーションに落とし込んでいきましょう。

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※ pastureでは通常、企業と取引するフリーランスや協力会社を「パートナー」と呼称しますが、本記事中では説明のために便宜、外注(外注先)などの用語を使用している箇所がございます。

 

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