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下請法とは?発注者側の義務と禁止事項を解説

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外注業者やフリーランス・個人事業主を活用する企業が増えていますが、その際に遵守すべき「下請代金支払遅延等防止法」(以下、「下請法」といいます。)「下請法」について正しく理解している担当者様は意外と少ないかもしれません。下請法に違反すると、罰金の可能性があるだけでなく、企業名や違反事実が公正取引委員会のWebサイトに公開されるケースもあります。また書面調査や立入検査も行われています。企業価値を損なうことのないよう、ぜひ下請法の内容を正しく理解しておきましょう。


現在pastureグループでは下請法に関する特設サイトを公開しております。法律のポイントや、政府の取り組みを解説した記事を掲載中です。フリーランスや中小企業と取引のある発注企業の方々はぜひご覧ください。サイトへは以下のバナー、もしくはこちらのURLから。

 

下請法とは

下請法とは、経済的に優越した地位にある親事業者(発注者)の濫用行為を規制することにより、下請取引の公正化を図るとともに、下請事業者(受注者)の経済的利益を保護することを目的とした法律です。端的に言えば、「下請けいじめ」を防止するための法律ということになるでしょうか。詳しくは後述しますが、親事業者による支払い遅延や不当な値引きなどを規制することで、下請事業者が経済的な不利益を被らないようにしています。

たとえば・・・

・下請事業者に責任がないのに、親事業者が発注後に下請代金の額を減じることはできません。

・下請事業者に責任がないのに、費用を負担せずに、発注の取消しや内容変更、やり直しをさせることはできません。

・親事業者の事務手続の遅れや、下請事業者からの請求書の提出が遅れたことを理由に、下請代金の支払日を遅らせることはできません。


下請法の対象になる取引

下請法では適用の対象となる下請取引の範囲を以下①②の両面から定めており、この2つの条件を満たす取引に下請法が適用されます。
①取引当事者の資本金(または出資の総額)
②取引の内容(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託)

下請法の規制対象(親事業者と下請事業者の範囲)を図示すると以下のようになります。

・物品の製造委託・修理委託
・情報成果物作成委託(プログラムの作成に限る)
・役務提供委託(運送、物品の倉庫における保管および情報処理に限る)

・情報成果物作成委託(プログラムの作成を除く)
・役務提供委託(運送、物品の倉庫における保管および情報処理を除く)

※参考:下請取引適正化推進講習会テキスト|公正取引委員会
https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/shitauketextbook.pdf

物品の製造委託

製造委託に関しては下請法第2条第1項で以下のように定められています。

●下請法 第2条(定義)

この法律で「製造委託」とは、事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料若しくはこれらの製造に用いる金型又は業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託することをいう。

 

製造委託とは、物品を販売する事業者、または物品の製造を請け負っている事業者が、規格・品質・形状・デザイン・ブランドなどを指定して、他の事業者に物品の製造や加工などを委託する取引です。製造委託は、下記の4つのパターンに分類できます。

① 物品の販売をおこなう事業者が、その物品や部品などの製造を他の事業者に委託する場合
例)自動車メーカーが、自動車の部品の製造を部品メーカーに委託する

② 物品の製造を請け負う事業者が、その物品や部品などの製造を他の事業者に委託する場合
例)精密機器メーカーが、受注生産する精密機械に用いる部品の製造を部品メーカーに委託する

③ 物品の修理をおこなう事業者が、その物品の修理に必要な部品や原材料の製造を他の事業者に委託する場合
例)家電メーカーが、販売した製品の修理用部品の製造を部品メーカーに委託する

④ 自社で使用・消費する物品を自社で製造している事業者が、その物品や部品などの製造を他の事業者に委託する場合
例)製品運送用の梱包材を自社で製造している精密機器メーカーが、その梱包材の製造を資材メーカーに委託する

 

修理委託

修理委託に関しては下請法第2条第2項で以下のように定められています。

●下請法 第2条(定義)

2 この法律で「修理委託」とは、事業者が業として請け負う物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託することをいう。

 

修理委託とは、修理を請け負った物品や、自社で修理している物品の修理を他の事業者に委託する取引です。修理委託は、下記の2つのパターンに分類できます。

① 物品の修理を業として請け負っている事業者が、修理行為の全部または一部を他の事業者に委託する場合
例)自動車ディーラーが請け負った自動車の修理作業を修理会社に委託する

② 自社で使用する物品を自社で修理している事業者が、その物品の修理行為の一部を他の事業者に委託する場合
例)自社工場の設備を社内で修理している工作機器メーカーが、その設備の修理作業を修理会社に委託する

情報成果物作成委託(プログラムの作成に限る)

情報成果物作成委託に関しては下請法第2条第3項で以下のように定められています。

●下請法 第2条(定義)

3 この法律で「情報成果物作成委託」とは、事業者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託することをいう。

 

情報成果物作成委託とは、プログラムやコンテンツなどの情報成果物の作成を、他の事業者に委託する取引です。情報成果物の例としては、TVゲームソフト、会計ソフトなどのプログラム、映画や放送番組、アニメなど、また設計図やポスターのデザインなどが挙げられます。情報成果物作成委託は、下記の3つのパターンに分類できます。

①情報成果物を業として提供している事業者が、その情報成果物の作成の行為の全部または一部を他の事業者に委託する場合
例)ソフトウェアメーカーが、ゲームソフトや汎用アプリケーションソフトの開発を他のソフトウェアメーカーに委託する

②情報成果物の作成を業として請け負っている事業者が、その情報成果物の作成の行為の全部または一部を他の事業者に委託する場合
例)広告会社がクライアントから受注したCM制作をCM制作会社に委託する

③自社で使用する情報成果物の作成を業としておこなっている場合に、その作成の行為の全部または一部を他の事業者に委託する場合
例)家電メーカーが自社のシステム部門で作成している自社用経理ソフトの作成の一部を、ソフトウェアメーカーに委託する場合

 

役務提供委託(運送、物品の倉庫における保管及び情報処理に限る)

役務提供委託に関しては下請法第2条第4項で以下のように定められています。

●下請法 第2条(定義)

4 この法律で「役務提供委託」とは、事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託することをいう。

※ただし、建設業(建設業法(昭和24年法律第100号)第2条第2項に規定する建設業をいう。)を営む者が、業として請け負う建設工事(同条第1項に規定する建設工事をいう。)の全部又は一部を他の建設業を営む者に請け負わせる場合は本法の対象とはならない。

 

役務提供委託とは、役務の提供を業としておこなっている事業者が、その提供の行為の全部または一部を他の事業者に委託する取引のことです。

例)自動車メーカーが、販売した自動車の保証期間内のメンテナンス作業を自動車整備会社に委託する
例)貨物運送業者が請け負った貨物運送業務のうち、一部経路の業務を他の事業者に委託する

なお、役務提供委託は、自社が顧客に提供するサービスを他社に再委託するケースに限って適用され、自社が自らサービスを利用する場合は含まれません。たとえば、荷主から貨物運送の委託のみを請け負っている場合、自らの運送作業に必要な梱包作業を他の事業者に委託する取引は、下請法上の役務提供委託に該当しません。

下請法が適用されるケース

下請法が適用されるのは、上述した4つの取引を、資本金の大きい会社が資本金の小さい会社や個人事業主に委託する場合です。具体的には、以下の2つのケースを押さえておきましょう。

  • ケース01

以下のいずれかの取引を自社で請け負い、それを他の事業者に再委託する場合、発注者と受注者の資本金の金額によっては下請法が適用になります。

・製造委託
・修理委託
・プログラムの作成委託
・運送・倉庫保管・情報処理の委託

▼発注者の資本金が3億1円以上である

資本金が3億円以下の会社、または個人事業主に発注する場合は下請法が適用になります。

▼発注者の資本金が1千万1円以上である3億1円以下である

資本金が1千万円以下の会社、または個人事業主に発注する場合は下請法が適用になります。

  • ケース02

以下のいずれかの取引の委託取引をおこなう場合、発注者と受注者の資本金の金額によっては下請法が適用になります。

・放送番組や広告の制作、商品デザイン、製品の取扱説明書、設計図面などの作成など、プログラム以外の情報成果物の作成
・ビルや機械のメンテナンス、コールセンター業務などの顧客サービス代行など、運送・物品の倉庫保管・情報処理以外の役務の提供

出典:公正取引委員会ホームページ
(https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/pointkaisetsu.pdf)

▼発注者の資本金が5千万1円以上である

資本金が5千万円以下の会社、または個人事業主に発注する場合は下請法が適用になります。

▼発注者の資本金が1千万1円以上である

資本金が1千万円以下の会社、または個人事業主に発注する場合は下請法が適用になります。

下請法における発注者側(親事業者)の義務

下請法では、発注者側(親事業者)に4つの義務を課しています。

(1)書面の交付義務(第3条)

口頭での発注によるトラブルを防止するため、親事業者は発注に際して発注内容を明確に記載した書面(3条書面)を下請事業者に交付する義務があります。

3条書面の記載事項は、「下請事業者の給付の内容」「下請事業者の給付を受領する期日」「下請代金の額」「下請代金の支払期日」などの12項目が定められています。詳細は、公正取引委員会のWebサイトでご確認ください。
>> 親事業者の義務:公正取引委員会

(2)支払期日を定める義務(第2条の2)

親事業者は、検査をするかどうかを問わず、発注した物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で下請代金の支払期日を定める義務があります。支払期日を定めなかった場合などは、以下のように支払期日が法定されています。

・当事者間で支払期日を定めなかったときは、物品等を実際に受領した日

・当事者間で合意された取決めがあっても、物品等を受領した日から起算して60日を超えて定めたときは、受領した日から起算して60日を経過した日の前日

(3)遅延利息の支払義務(第4条の2)

親事業者が下請代金を支払期日までに支払わなかったときは、下請事業者に対し、物品等を受領した日から起算して60日を経過した日から実際に支払をする日までの期間、その日数に応じ下請事業者に対して遅延利息(年率14.6%)を支払う義務があります。

(4)書類の作成・保存義務(第5条)

親事業者は、下請取引が完了したら取引に関する記録を書類(5条書類)として作成し、2年間保存する義務があります。5条書類の記録事項は、「下請事業者から受領した給付の内容及び給付を受領した日」「支払った下請代金の額、支払った日及び支払手段」などの17項目が定められています。詳細は、公正取引委員会のWebサイトでご確認ください。
>> 親事業者の義務:公正取引委員会

下請法における発注者側(親事業者)の禁止行為

下請法では、発注者側(親事業者)による成果物の受領拒否や下請代金の減額、下請代金の支払遅延など11項目の行為を禁止しています。仮に下請事業者の了解を得ていても、また親事業者に違法性の認識がなくても、以下の禁止行為をおこなうと下請法違反となります。

受領許否の禁止

受領拒否とは、下請事業者に責任がないのに親事業者が発注した物品などを受け取らないことを言います。親事業者が下請事業者に対して委託した給付の目的物について、親事業者は、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに受領を拒むと下請法違反に問われるおそれがあります。なお、受領とは、下請事業者が納入したものを社内検査の有無にかかわらず受け取る行為を指し、下請事業者の納入物品などを親事業者が事実上支配下におけば受領したことになります。

●下請法 第4条第1項

親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあっては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。

一 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むこと。

 

親事業者が下請事業者に対して委託するものは親事業者が指定する仕様などに基づいた特殊なものが多く、親事業者に受領を拒否されると他社への転売が困難であり、下請事業者の利益が著しく損なわれます。これを防止するために設けられたのが「受領拒否の禁止」の規定です。

下請法違反事例

①スーパー▶▶▶衣料品メーカー
在庫の余剰を理由に、発注した衣料品の一部をキャンセルし、受領を拒否する。

②放送事業者▶▶▶番組制作会社
親事業者の指定した出演者の不祥事による放送中止を理由に、完成している番組VTRテープの受領を拒否する。

 

下請代金の支払遅延の禁止

下請代金の支払遅延とは、親事業者が物品などを受け取った日(受領日)から60日以内で定めなければならない支払日までに下請代金を支払わないことです。親事業者は、親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、受領日から起算して60日以内に定めた支払期日までに下請代金を全額支払わないと下請法違反に問われるおそれがあります。なお、支払遅延が生じた場合、親事業者は下請事業者に対し、受領後60日を経過した日から支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該未払金額に年率14.6%を乗じて得た額を遅延利息として支払う義務を負います。

●下請法 第4条第1項

親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあっては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。

二 下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと。

 

下請事業者は、支払期日までに下請代金の支払いを受けなければ資金繰りがつかず、従業員への賃金の支払いや材料代の支払いなどが困難になり、最悪の場合、倒産に追い込まれるなど経営の安定が損なわれます。これを防止するために設けられたのが「下請代金の支払遅延の禁止」の規定です。

下請法違反事例

①ソフトウェア・メーカー▶▶▶ソフトウェア・メーカー
納入されたプログラムの検査に3ヶ月を要したため、支払いが納入後60日を経過する。

②精密機械メーカー▶▶▶部材メーカー
一定量の部材を倉庫に納品させ、使用高払いをしていたため、支払いが納品後60日を経過する。

 

下請代金の減額の禁止

下請法は、下請事業者に責任がないのに、発注時に定められた金額から一定額を減じて支払うことを全面的に禁止しています。値引き、協賛金、歩引きなど、減額の名目、方法、金額の多少を問わず、また下請事業者との合意がある場合でも、親事業者が下請代金を減額して支払うと下請法違反に問われるおそれがあります。

●下請法 第4条第1項

親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあっては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。

三 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。

 

下請取引においては下請事業者の立場が弱く、いったん決定された下請代金であっても事後に減ずるよう要請されやすいという実態があります。一方、下請事業者はこのような要求を拒否することが困難であり、下請代金の額が減じられると下請事業者の利益が損なわれます。これを防止するために設けられたのが「下請代金の減額の禁止」の規定です。

下請法違反事例

①家電メーカー▶▶▶部品メーカー
輸入向け製品に用いられた部品を特別処理として、当初の発注価格から減額する。

②ソフトウェア・メーカー▶▶▶サービス代行会社
ユーザーサポート業務を委託したが、問い合わせ件数が少なかったことから減額する。

 

返品の禁止

不当返品とは、下請事業者に責任がないのに、発注した物品などを受け取った後に返品することです。親事業者は、下請事業者から納入された物品などを不当返品すると下請法違反に問われるおそれがあります。親事業者の取引先からのキャンセルや商品の入替えなどの名目や数量の多寡を問わず、また、仮に親事業者と下請事業者との間で返品することについて合意があったとしても、下請事業者の責めに帰すべき理由なく不当返品すると下請法違反に問われるおそれがあります。

●下請法 第4条第1項

親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあっては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。

四 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせること。

 

納入した物品などが返品されると下請事業者の利益が著しく損なわれます。これを防止するために設けられたのが「返品の禁止」の規定です。

下請法違反事例

①電気機器メーカー▶▶▶部品メーカー
生産計画の変更を理由に、余剰になった部品を製造元に返品する。

②衣料品メーカー▶▶▶繊維加工メーカー
従来の検査基準を満たしている生地を不良品として返品する。

 

買いたたきの禁止

買いたたきとは、下請代金の額を決定するときに、発注した内容と同種または類似の給付の内容に対して通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定めることです。親事業者が、発注に際して下請代金の額を決定する際に買いたたきをおこなうと下請法違反に問われるおそれがあります。

●下請法 第4条第1項

親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあっては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。

五 下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること。

 

親事業者が下請事業者と下請代金の額を決定する際に、その地位を利用して、通常支払われる対価に比べて著しく低い額を下請事業者に押し付けることは、下請事業者の利益を損ない経営を圧迫することになります。これを防止するために設けられたのが「買いたたきの禁止」の規定です。


なお、買いたたきに該当するかどうかは、以下のような要素を勘案して総合的に判断されます。
・下請代金の額の決定にあたり、下請事業者と十分な協議がおこなわれたかどうかなど対価の決定方法
・差別的であるかどうかなど対価の決定内容
・通常支払われる対価と当該給付に支払われる対価との乖離状況
・当該給付に必要な原材料などの価格動向

下請法違反事例

①運送会社▶▶▶運送会社
荷主からの料金引き下げ要請を理由に、下請代金を一方的に引き下げる。

②精密機械メーカー▶▶▶電子メーカー
部品の大量発注を前提とした単価を、少量発注の単価として適用する。

購入・利用強制の禁止

購入・利用強制とは、正当な理由がないのに、親事業者が指定する物品、役務などを下請事業者に強制して購入、利用させることです。親事業者は正当な理由がないのに、親事業者の指定する製品(他社製品も含む)・原材料などを強制的に下請事業者に購入させたり、サービスなどを強制的に下請事業者に利用させて対価を支払わせたりすると下請法違反に問われるおそれがあります。

●下請法 第4条第1項

親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあっては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。

六 下請事業者の給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させること。

 

正当な理由がある場合を除き、親事業者が指定した物や役務を下請事業者に強制して購入・利用させることを禁止し、親事業者が自社商品やサービスなどを下請事業者に押し付け販売することを防止するために設けられたのが「購入・利用強制の禁止」の規定です。

下請法違反事例

①自動車メーカー▶▶▶各納入業者
自社工場に乗り入れられる車種を制限し、自社製車両の購入を強制する。

②家電メーカー▶▶▶部品メーカー
仕事を発注するにあたり、自社が指定する会社の損害保険契約を強制する。

報復措置の禁止

報復措置とは、親事業者が下請法の禁止行為に該当する行為をおこなった場合に、下請事業者がその事実を公正取引委員会や中小企業庁に知らせたことを理由に、取引数量を削減したり取引停止などの扱いをしたりすることです。親事業者は、下請事業者が親事業者の下請法違反行為を公正取引委員会または中小企業庁に知らせたことを理由として報復行為をおこなうと下請法違反に問われるおそれがあります。

●下請法 第4条第1項

親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあっては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。

七 親事業者が第1号若しくは第2号に掲げる行為をしている場合若しくは第3号から前号までに掲げる行為をした場合又は親事業者について次項各号の一に該当する事実があると認められる場合に下請事業者が公正取引委員会又は中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすること。

 

下請事業者が親事業者の報復を恐れず公正取引委員会や中小企業庁に対し、親事業者の下請法違反行為を申告できるようにするために設けられたのが「報復措置の禁止」の規定です。

下請法違反事例

①家電メーカー▶▶▶部品メーカー
下請事業者は長年にわたって取引関係にある親事業者から一方的に下請代金を減額されたため、その事実を中小企業庁に申告したところ、親事業者から突然、取引停止を通告された。

有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止

有償支給原材料等の対価の早期決済とは、有償支給する原材料などで下請事業者が物品の製造などをおこなっている場合に、下請事業者に責任がないのに、その原材料などが使用された物品の下請代金の支払日より早く、支給した原材料などの対価を支払わせ、下請事業者の利益を不当に害することです。親事業者は、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに有償支給原材料等の対価の早期決済をおこなうと下請法違反に問われるおそれがあります。

●下請法 第4条第2項

親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあっては、第1号を除く。)に掲げる行為をすることによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。

一 自己に対する給付に必要な半製品、部品、附属品又は原材料(以下「原材料等」という。)を自己から購入させた場合に、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、当該原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、支払うべき下請代金の額から当該原材料等の対価の全部若しくは一部を控除し、又は当該原材料等の対価の全部若しくは一部を支払わせること。

 

親事業者が有償で支給した原材料などの対価を早期に決済することは、下請事業者の受け取るべき下請代金の額を減少させ、支払遅延の場合と同様、資金繰りが苦しくなるなど下請事業者が不利益を被ることになります。これを防止するために設けられたのが「有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止」の規定です。

下請法違反事例

①食品メーカー▶▶▶食品加工会社
加工期間を考慮せず、原材料を支給した直後の下請代金支払日に原材料費を決済する。
②金属メーカー▶▶▶部品メーカー
半年分の原材料をまとめて買い取らせ、その原材料で作られる製品の代金を支払うより前に原材料の代金を決済する。

 

割引困難な手形の交付の禁止

割引困難な手形の交付とは、下請代金を手形で支払う際、一般の金融機関で割引を受けることが困難な手形を交付し、下請事業者の利益を不当に害することです。割引困難な手形とは、繊維業は90日、その他の業種は120日を超える長期の手形を言います。親事業者は、下請事業者に対し下請代金を手形で支払う場合、割引困難な手形を交付すると下請法違反に問われるおそれがあります。

●下請法 第4条第2項

親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあっては、第1号を除く。)に掲げる行為をすることによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。

二 下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。

 

下請代金が銀行などの一般の金融機関において割引を受けることが困難な手形で支払われることにより、下請事業者の利益が不当に害されます。これを防止するために設けられたのが「割引困難な手形の交付の禁止」の規定です。

下請法違反事例

①工業機械メーカー▶▶▶部品メーカー
手形期間が120日(繊維業以外の業種において認められる手形期間)を超える手形を交付していた。

②衣料品メーカー▶▶▶衣料品メーカー
手形期間が90日(繊維業において認められる手形期間)を超える手形を交付していた。

不当な経済上の利益の提供要請の禁止

不当な経済上の利益の提供要請とは、自社のために、下請事業者に現金やサービス、その他の経済上の利益を提供させ、下請事業者の利益を不当に害することです。親事業者は、下請事業者に対して不当な経済上の利益を提供させると下請法違反に問われるおそれがあります。

●下請法 第4条第2項

親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあっては、第1号を除く。)に掲げる行為をすることによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。

三 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。

 

下請事業者が親事業者のために協賛金、従業員の派遣などの経済上の利益を提供させられると下請事業者の利益が不当に害されます。これを防止するために設けられたのが「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」の規定です。

下請法違反事例

①機械メーカー▶▶▶金型メーカー
海外で金型を製造するため、従来、金型を製造していた会社に図面を無償提供させる。

②デパート・スーパー▶▶▶運送会社
自社で配送業務をおこなう小売業者が、委託先の運送会社に店舗の営業を手伝わせる。

 

不当な給付内容の変更および不当なやり直しの禁止

不当な給付内容の変更・やり直しとは、下請事業者に責任がないのに親事業者が費用を負担せず、発注の取消しや内容変更、やり直しをさせ、下請事業者の利益を不当に害することです。親事業者は、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領前にその内容を変更させたり、受領後に給付のやり直しをさせたりすると下請法違反に問われるおそれがあります。

●下請法 第4条第2項

親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあっては、第1号を除く。)に掲げる行為をすることによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。

四 下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の内容を変更させ、又は下請事業者の給付を受領した後に(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした後に)給付をやり直させること。

 

下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、親事業者が下請事業者に対して、費用を負担せずに給付の内容の変更をおこなったりやり直しをさせたりすることは、下請事業者に必要ない作業を強いることになり、下請事業者の利益が損なわれます。これを防止するために設けられたのが「不当な給付内容の変更および不当なやり直しの禁止」の規定です。

下請法違反事例

①ビルメンテナンス会社▶▶▶清掃会社
委託した清掃業務の発注を取り消し、清掃会社が手配に要した費用を負担しない。

②広告会社▶▶▶デザイン会社
担当者の異動に伴い制作方針が変わり、費用を負担せずにデザインを変更させる。


※参考:ポイント解説下請法(親事業者向け)|公正取引委員会
https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/pointkaisetsu.pdf

※参考:知るほどなるほど下請法|公正取引委員会
https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/sitaukepamph.pdf

※参考:下請取引適正化推進講習会テキスト|公正取引委員会
https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/shitauketextbook.pdf

下請法に違反したときの罰則

公正取引委員会や中小企業庁では、毎年、親事業者・下請事業者に対する書面調査を実施しているほか、必要に応じて、親事業者の保存している取引記録の調査や立入検査をおこなっています。また、インターネット上などで下請法違反の申告を受け付けており、下請事業者からの申告によって違反行為が発覚するケースも少なくありません。

下請法違反があった場合は勧告・公表がおこなわれ、最高で50万円の罰金が科せられます。

勧告・公表

公正取引委員会は、親事業者が下請法に違反した場合、それを取り止めて原状回復させること(減額分や遅延利息の支払い等)を求めるとともに、再発防止などの措置を実施するよう、勧告・公表をおこなっています。企業名や違反内容がホームページで公表されるため、親事業者の社会的信頼が大きく損なわれる可能性があります。

▼代金減額分などの返還

親事業者に代金減額や不当返品などの下請法違反があった場合、代金減額分などを下請事業者に返還するよう指導・勧告がおこなわれます。令和元年度においては、下請事業者が被った不利益につき、親事業者268名から下請事業者7,469名に対し、総額で27億7,651万円相当の返還、原状回復がおこなわれました。

▼自発的に申し出た場合

親事業者が自発的に下請法違反の事実を公正取引委員会に申し出た場合、自発的申出について審査をおこなった結果、以下の要件を満たしていると認められた場合には勧告が行われないこととされています。

1. 公正取引委員会が当該違反行為に係る調査に着手する前に、当該違反行為を自発的に申し出ている。

2. 当該違反行為をすでに取りやめている。

3. 当該違反行為によって下請事業者に与えた不利益を回復するために必要な措置(*)をすでに講じている。

4. 当該違反行為を今後おこなわないための再発防止策を講じることとしている。

5. 当該違反行為について公正取引委員会がおこなう調査および指導に全面的に協力している。

(*)… 下請代金を減じていた事案においては、減じていた額の少なくとも過去1年間分を返還している。
※ 参考:下請法違反行為を自発的に申し出た親事業者の取扱いについて|公正取引委員会

50万円以下の罰金 等

親事業者が、発注書面を交付する義務、取引記録に関する書類の作成・保存義務を守らなかった場合は、違反行為をした本人(発注をした企業担当者)のほか、企業も50万円以下の罰金に処せられます。同じく50万円以下の罰金となる場合として、報告徴収に対する報告拒否、虚偽報告や立入検査の拒否、妨害、忌避(同11条)があります。

まとめ 下請法で発注者側が取り組むべきこと

下請法に違反してしまうと、企業の社会的評価は著しく損なわれ、甚大な不利益を被ることになります。

下請法を守って公正な取引をおこなっていくには、あらためて発注者側の心構えを正す必要があるかもしれません。発注担当者に「発注者=強者、下請け=弱者」といった意識が少しでもあると、それが下請法違反の引き金になってしまいます。下請事業者とは、対等なビジネスパートナーという意識で関係を構築していくことが大切です。

そのうえで、下請法をしっかりと理解し、「契約書に下請法に違反する内容が含まれていないか?」「発注書は下請法に則って作成されているか?」など、ガイドラインを作成してオペレーションに落とし込んでいきましょう。

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※ pastureでは通常、企業と取引するフリーランスや協力会社を「パートナー」と呼称しますが、本記事中では説明のために便宜、外注(外注先)などの用語を使用している箇所がございます。

※本記事は作成時点の官公庁Webサイトを参考に編集をしています。各種法律・制度についての最新情報や問い合わせ先などは各官公庁のWebサイトでご確認ください。


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