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見積書の保管期間はどれくらい?おすすめの保管方法も紹介

見積書は、製品やサービスの金額や取引条件を相手方に提示するための書類です。請求書や領収書と同じように取引の証拠となる証憑(しょうひょう)書類として、一定期間の保管が求められています。最近は、紙ではなくPDFなどのデータで見積書を発行する企業も増えていますが、その場合も保管が必要なことに変わりはありません。見積書の保管期間は、法人の場合と個人事業主の場合で異なるほか、それぞれ例外があるので注意が必要です。

今回は、見積書の保管期間や保管方法を中心に、見積書に関して押さえておきたいポイントをご紹介します。




■見積書の保管期間

見積書は、取引の証拠となる証憑(しょうひょう)書類として、一定期間の保管が義務付けられています。保管するのは、自社で発行した見積書の控えや、取引先に発行してもらった見積書です。

なお、発行もしくは受領した見積書のなかには、見積書の有効期限内に契約に至らなかったものもあると思います。そのような見積書は法律上、保管する必要はありませんが、後に他の案件の参考にするために社内資料として残しておくことが多いようです。

 

  • 法人における見積書の保管期間

▼原則:7年間

法人の場合、見積書の保管期間は「7年間」です。

 

▼例外:9年間・10年間

平成23年の税制改正により、欠損金(赤字)の繰越期間が9年間に伸長されました。これにともない、平成20年4月1日以降に終了した欠損金の生じた事業年度については、見積書も「9年間」保管しなければいけません。

また、平成27・28年度の税制改正により、欠損金の繰越期間が10年間に伸長されました。これにともない、平成30年4月1日以降に開始する欠損金の生じた事業年度については、見積書も「10年間」保管しなければいけません。

 

  • 個人事業主における見積書の保管期間

▼原則:5年間

個人事業主の場合、見積書の保管期間は「5年間」です。青色申告であっても白色申告であっても、保管期間に違いはありません。

 

▼例外:7年間

消費税の課税事業者である個人事業主の場合、見積書を「7年間」保管しなければいけません。

 

・基準期間(前々年度)の課税売上高が1,000万円以下の個人事業主

⇒ 消費税の免税事業者であるため、見積書の保管も原則どおり5年間でOK。

 

・基準期間(前々年度)の課税売上高が1,000万円を上回る個人事業主

⇒ 消費税の課税事業者となるため、見積書を7年間保管する必要がある。


■見積書の保管方法

見積書の保管方法は、紙で保管するか、電子データで保管するかのいずれかです。厳密に言うと、マイクロフィルムで保管する方法もありますが、この方法は一般的な方法とは言えないため、本記事での説明は割愛させていただきます。

 

  • 見積書を「紙」で保管する

見積書は、自社で発行した見積書の控えを保管する場合と、取引先に発行してもらった見積書を保管する場合があります。いずれの場合も、年月日順にファイリングしたり、取引先別にまとめたりして保管するのが一般的です。

もちろん、見積書を紙で保管するのは、法的にも認められている正しい保管方法ですが、実務上は、紙で保管することで以下のような問題・リスクがあるのも事実です。

 

・経年とともに紙やインクが劣化し、文字が読みにくくなることがある。

・火災などの災害や人的ミスによって、破損したり紛失したりするおそれがある。

・仕分けやファイリングが手作業になるので、ミスが起こりやすい。

・書棚やキャビネットなど、保管するための設備・スペースが必要になる。

・後に見積書を確認する必要があるときに、すぐに見つからないことがある。

・別の拠点にある見積書を確認したいとき、手配するのに時間がかかる。

このような問題を解消するため、近年は、後述する「電子データでの保管」に移行する企業が増えています。

 

  • 見積書を「電磁気(電子データ)」で保管する

見積書を電子データによる保管は、以下の3つのパターンが想定されます。

 

①自社がコンピュータで作成した見積書の控え

②取引先から受け取った紙の見積書

③電子取引による見積書

 

 

▼パターン① 自社がコンピュータで作成した見積書の控え

自社が一貫してコンピュータで作成した見積書の控えは、印刷した紙で保管するほか、オリジナルの電子データで保管することも可能です。

なお、オリジナルの電子データで保管する場合は、自社の一存だけで保管できるわけではなく、事前に税務署長の承認が必要になります。その他にも、一定の要件をクリアしていないと電子データでの保管はできません。詳しくは国税庁のパンフレットをご覧ください。

>> はじめませんか、帳簿書類の電子化!|国税庁

 

▼パターン② 取引先から受け取った紙の見積書

取引先から受け取った紙の見積書は、そのまま紙で保管するほか、スキャナで読み取った電子データや、スマホで撮影した電子データで保管することも可能です(この保管方法を「スキャナ保存」と言います)。

なお、スキャナ保存は任意に始められるわけではなく、事前に税務署長の承認が必要になります。その他にも、一定の要件をクリアしていないとスキャナ保存はできません。詳しくは国税庁のパンフレットをご覧ください。

>> はじめませんか、書類のスキャナ保存!|国税庁

 

▼パターン③ 電子取引による見積書

はじめから電子データで作成・授受している見積書は、電子データで保管する必要があります。これは、電子帳簿保存法10条で求められる「義務」であり、上述した2つのパターンと異なり、税務署長の承認は不要です。

 

・電子帳簿保存法 第10条

所得税及び法人税の保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。


■見積書の役割とは?

そもそも見積書とは、製品やサービスの金額・取引条件を、前もって取引先に提示するための書類です。ビジネスの現場では頻繁にやり取りされる書類であり、取引における最初のステップとして重要な役割を果たします。

「A社がB社にシステム開発に関する見積書の発行を依頼するケース」を前提に、見積書の役割を見てきましょう。A社は、システム開発の発注先を探している会社で、B社はシステム開発会社です。両社の間に過去の取引はないものとします。

 

  • 見積書の役割①:発注するかどうかの判断材料になる

システム開発の発注を検討しているA社からすると、B社に見積書を発行してもらうことで、B社に発注した場合の「費用」を知ることができます。これは、B社に発注するかどうかの大きな判断材料になり、意思決定がしやすくなります。

 

  • 見積書の役割②:相場を把握して比較検討できる

A社が、いわゆる「相見積もり」をして、B社のほかC社やD社にも見積書を発行してもらったとします。A社は複数のシステム開発会社に見積書を発行してもらうことで、システム開発費の相場を知ることができます。そのうえで、比較検討しながら発注先を選ぶことができます。

 

  • 見積書の役割③:受注に向けたツールになる

B社からすると、見積書の発行を依頼されたということは、A社との契約を獲得するチャンスだと言えます。見積書で提示した費用や取引条件がA社のニーズにマッチすれば、自社に発注してもらえる可能性が高くなります。C社・D社と比較される場合も、費用や取引条件を調整しながら受注に向けて交渉を進められます。

 

  • 見積書の役割④:後のトラブルを防止できる

もし、A社がB社から見積書を発行してもらわずに口約束だけで取引を進めた場合、後になって、費用や支払い方法、納期や成果物に対する認識の違いから、トラブルに発展してしまうリスクがあります。見積書自体は必ず発行しなければならない書面ではありませんが、見積書があることによって最低限の取引条件について共通認識を得られるため、後のトラブル防止につながります。


■見積書の持つ法的な意味

上述した4点は、見積書が持つ実務上の役割だと言えます。法的な観点で見ると、見積書にはどんな意味があるのでしょうか。

民法上、契約が成立するには、一方当事者による「申込み」と他方当事者による「承諾」が必要です。申込みと承諾があることで、当事者双方の意思が合致したとして契約が成立します。そして、見積書は契約の「申込み」の性格を有しています。つまり、見積書が発行され、それに対して注文書などで承諾の意思表示がおこなわれれば、契約書を作成しなくても契約が成立するわけです。

実務上は、契約書を作成するケースが大半ですが、「見積書と注文書があれば契約が成立しうる」ということは認識しておきましょう。


■見積書以外で保管義務がある書類

見積書以外にも、請求書や領収書、注文書や契約書なども一定期間の保管が義務付けられています。それぞれの書類の保管期間などは、以下の記事で詳しく解説しています。

 

>> 請求書の保管期間はいつまで?管理方法を紹介 – pasture

>> 領収書の保管期間はいつまで?保管期間の注意点とは – pasture 

>> 注文書・発注書の保管期間は?電子保存の方法を解説 – pasture

>> 契約書の保管期間はいつまで?法律上の保管期間と保存方法を紹介 – pasture


■まとめ~見積書など保管義務のある書類は早急なデータ化を!

見積書を紙でやり取りしていたら、ビジネスの機動力が大きく損なわれてしまいます。発行や保管にかかる労力・コストを考えても、メリットはほとんどありません。見積書に限らずデータ化可能な書類はどんどんデータ化して、ペーパーレス化を推進していきましょう。

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※ pastureは、クラウド上で見積書データのやり取りはできますが、見積書の作成・発行機能はございません。



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