請求書に収入印紙が必要な場合とは?
契約書や領収書に貼られることが多い収入印紙ですが、「請求書には貼らなくていいの?」という疑問をお持ちの方もいるかもしれません。基本的に、請求書に収入印紙を貼る必要はありませんが。例外的に収入印紙が必要になる場合があるので注意が必要です。今回は、収入印紙の基礎知識や請求書に収入印紙を貼るべきケースなどについて解説していきます。
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契約書や領収書には収入印紙が貼られるケースが多々ありますが、このような文書に収入印紙が貼られているのは「印紙税法」で義務付けられているからです。つまり、収入印紙を購入して文書に貼ることで税金(印紙税)を納めている、ということになります。
印紙税法が定める「課税文書」を作成する際には、その課税文書に一定額の収入印紙を貼らなければいけません。契約書や領収書などの課税文書が作成されるときには、その取引によって当事者に経済的な利益が生じていると考えられます。経済的利益が生じているということは、国が税を徴収する根拠になります。そのため、「課税文書に収入印紙を貼る」という形で税金を納付するルールになっているのです。
- 収入印紙が必要な課税文書
印紙税法が定める課税文書には、印紙税が課されます。印紙税法では以下のとおり、20種類の文書を課税文書として定めています。
▼印紙税法別表第1(課税物件表)
1号 | 不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書
地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書 消費貸借に関する契約書 運送に関する契約書(傭船契約書を含む。) |
2号 | 請負に関する契約書 |
3号 | 約束手形又は為替手形 |
4号 | 株券、出資証券若しくは社債券又は投資信託、貸付信託、特定目的信託若しくは受益証券発行信託の受益証券 |
5号 | 合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設分割計画書 |
6号 | 定款 |
7号 | 継続的取引の基本となる契約書 |
8号 | 預金証書、貯金証書 |
9号 | 倉荷証券、船荷証券、複合運送証券 |
10号 | 保険証券 |
11号 | 信用状 |
12号 | 信託行為に関する契約書 |
13号 | 債務の保証に関する契約書 |
14号 | 金銭又は有価証券の寄託に関する契約書 |
15号 | 債権譲渡又は債務引受けに関する契約書 |
16号 | 配当金領収証、配当金振込通知書 |
17号 | 売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書
売上代金以外の金銭又は有価証券の受取書 |
18号 | 預金通帳、貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳 |
19号 | 消費貸借通帳、請負通帳、有価証券の預り通帳、金銭の受取通帳などの通帳 |
20号 | 判取帳 |
1号から20号までのいずれかに該当すれば、その文書は課税文書なので、収入印紙を貼らなければいけません。代表的なところでは、業務委託契約書は7号文書「継続的取引の基本契約書」に該当し、領収書は17号文書「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」に該当します。
一方で、1号から20号までのいずれにも該当しない文書は課税文書ではないので、原則として収入印紙を貼る必要はありません。
上記の「印紙税法別表第1(課税物件表)」の1号から20号まで目を通してみても、「請求書」という文言は見当たりません。つまり、請求書は課税文書として規定されていないので、収入印紙を貼る必要はありません。しかし、例外的に請求書に収入印紙を貼らなければいけないケースもあります。
- 請求書が領収書を兼ねる場合は収入印紙が必要!
場合によっては、請求書が領収書の役割を兼ねることがあります。具体的には、請求書に「代済」「領収」「済」「了」などと記載されていて、もしくはゴム印が押されていて、代金を受領した旨が明らかになっている場合は、単なる請求書ではなく「請求書 兼 領収書」であると言えます。この場合、領収書は課税文書として規定されていることから、「請求書 兼 領収書」には収入印紙を貼る必要があるという判断になるわけです。
つまり、ある文書が課税文書であるかどうかは、文書の名称で判断されるのではなく実質的な内容で判断されるということです。表題が「請求書」となっている文書でも、代金を受け取った事実を証明する記載があれば領収書としての性質がある判断され、印紙税法上の課税文書になります。ゆえに、収入印紙の貼り付けが必要になります。
請求書が領収書を兼ねている場合、印紙税法の17号文書「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」に該当するため、収入印紙を貼る必要があります。その場合の収入印紙の金額は、以下のとおり定められています。記載金額が高くなるにつれ、必要となる収入印紙の額も段階的に高くなっていきます。
記載金額 | 収入印紙の額 |
5万円未満のもの | 非課税 |
5万円以上100万円以下のもの | 200円 |
100万円を超え200万円以下のもの | 400円 |
200万円を超え300万円以下のもの | 600円 |
300万円を超え500万円以下のもの | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 2,000円 |
※引用:No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書|国税庁
課税文書を作成する際は、必ず最新の「印紙税額一覧表」で印紙税額を確認するようにしましょう。
- 「請求書 兼 領収書」でも収入印紙が不要な場合
原則として「請求書 兼 領収書」には収入印紙を貼る必要がありますが、すべての「請求書 兼 領収書」に収入印紙が必要になるわけではありません。3つの例外を押さえておきましょう。
▼「請求書 兼 領収書」の金額が5万円未満の場合
「請求書 兼 領収書」に記載された金額が5万円未満の場合は、非課税となるため収入印紙は不要です。
一つ注意が必要なのが、消費税です。税抜金額が5万円未満でも税込みにすると5万円を超えるケースがありますが、この場合、印紙税は課税されません。印紙税の課税対象になる金額は税抜きの売上代金であり、消費税は考慮しません。そのため、「請求書 兼 領収書」に記載された売上代金が5万円以上でも、本体価格が5万円未満であることが明記されていれば収入印紙を貼る必要はありません。
▼「請求書 兼 領収書」が電子データで作成されている場合
「請求書 兼 領収書」が電子データで作成されている場合、印紙税は非課税になります。印紙税法は紙の文書を課税対象としており、電子文書は課税対象とはなりません。そのため、PDFなどの電子データで作成された「請求書 兼 領収書」に収入印紙の貼付は不要です。
▼クレジットカードを利用した取引の場合
クレジットカード販売は、信用取引によって商品を引き渡すものであり、金銭(現金)や有価証券のやり取りは発生しません。そのため、「請求書 兼 領収書」に記載された売上代金が5万円以上であっても、印紙税法の17号文書には該当せず、収入印紙を貼る必要はありません。ただし、クレジットカードを利用したことが「請求書 兼 領収書」に明記されていなければ、収入印紙が必要になります。
なお、電子マネーを利用して決済した場合は、金銭のやり取りがあったとみなされるため、「請求書 兼 領収書」に記載された売上代金が5万円以上であれば収入印紙が必要になります。
収入印紙は切手と同じように裏面に「のり」が付いていますが、課税文書にそれを貼るだけでは印紙税を納めたことにはなりません。収入印紙に「消印」をすることで初めて、印紙税を納税したことになります。また、消印は収入印紙が使用済みであることを示し、再利用を防止する役割も果たします。
消印をする方法は、課税文書と収入印紙にまたがるように印鑑を押すか、署名をするかのいずれかです。消印に使う印鑑は課税文書に押した印鑑と同じものである必要はなく、シャチハタなどでも構いません。また、著名によって消印をするときは、鉛筆のように消せるものではなくボールペンなどを使う必要があります。
なお、複数の人が共同で作成した課税文書の収入印紙は、作成者のうち一人が消印をすればOKです。
- 収入印紙を購入できる場所は?
収入印紙は1円〜10万円まで全部で31種類ありますが、31種類すべてを扱っているのが郵便局です。高額の収入印紙を購入するときやまとめ買いをするときは、郵便局に行くのがおすすめです。郵便局以外では、コンビニや法務局、金券ショップなどでも収入印紙を扱っています。ただし、どのくらい在庫があるかは店舗・施設によって異なるので、事前に確認したうえで買いに行くのがいいでしょう。
「請求書 兼 領収書」は課税文書に該当するので、原則として収入印紙が必要です。にもかかわらず、収入印紙を貼らなかった場合は、印紙税法違反として過怠税が課されます。過怠税の税額は、本来納めるべきであった印紙額の3倍です。また、「請求書 兼 領収書」に収入印紙を貼っていても、消印をしていない場合は、印紙額と同額の過怠税が課されます。
ここまでは、課税文書を「発行する側」の話です。一方で、収入印紙が貼られていない課税文書を「受け取った側」はどうすればいいのでしょうか。収入印紙を貼り付けて印紙税を納めるのは、課税文書を発行する側の義務です。そのため、収入印紙が貼られていない「請求書 兼 領収書」を受領したとしても、受領した側に問題が生じることはありません。また、収入印紙が貼られていないからという理由で、「請求書 兼 領収書」の効力がなくなることもありません。
印紙税法は、「課税文書に該当するかどうか?」「収入印紙はいくら必要なのか?」など、ややこしい部分が多々あります。そのため、金額を間違えて収入印紙を多く貼ってしまったり、収入印紙を貼る必要のない文書に貼ってしまったりといったミスが起きがちです。
このように、誤って収入印紙を貼ってしまった場合でも、税務署で所定の手続きをおこなうことで還付してもらえます。方法は、税務署で「印紙税過誤納確認申請書」を記入して、誤って収入印紙を貼ってしまった文書と一緒に提出するだけ。後日、口座振込などで返金されます。
請求書の発行・管理を効率化するなら、システムの導入は必須です。最近では、「請求書発行システム」や「帳票管理システム」と呼ばれるシステムを導入する企業が増えています。このようなシステムを導入するメリットとしては、大きく以下の3点が挙げられます。
- 印紙税などのコストを削減できる!
システムを活用して作成する請求書は、基本的にPDFなどの電子データで出力されます。紙で発行する「請求書 兼 領収書」は収入印紙が必要ですが、電子文書で発行すれば印紙税は非課税です。「請求書 兼 領収書」に限らず、課税文書の作成が多い企業や高額の取引が多い企業は、システムを導入して課税文書を電子化することで大きな節税効果が期待できます。
また、課税文書を電子化すればプリントアウトする必要がなくなるので、紙代やインク代、印刷代や郵送費などのコストを削減できます。このようなコストは微々たる金額に思えますが、長い目で見ると非常に大きなコスト削減効果をもたらします。
- 請求書のミスを削減できる!
請求書発行システムや帳票作成システムのほとんどは、自動入力機能や入力補助機能を備えているため、手入力によるミスを大幅に削減できます。これらのシステムは、元になる請求データを取り込むだけで半自動的に請求書を作成可能。会計ソフトと連携できるシステムなら、既存の会計ソフトに入力したデータがそのまま請求書のデータとして反映されます。
- 業務効率化を推進できる!
請求書発行システムや帳票作成システムを導入することで、「文書を印刷して、ハンコを押して、収入印紙を貼って、消印をして、取引先に郵送して・・・」といった煩わしい業務から解放されます。業務フローがIT化されてシンプルになることで、大幅な業務効率化につながります。
このようなメリットを見るとシステムを導入しない手はありませんが、導入を検討する際は自社にとって最適なシステムを見極めることが重要です。様々な特徴・機能を持ったシステムが登場していますが、フリーランスとの取引が多い企業にはフリーランスマネジメントシステム「pasture」がおすすめです。
「pasture」は、フリーランスに特化した発注・請求管理システムです。フリーランスとの取引情報をすべて可視化でき、発注から案件進行中のやり取り、納品、検収、請求、支払いまで、業務フローを一元管理することができます。収入印紙を貼る必要がない電子請求書や電子発注書の発行・オンライン送付も可能な「pasture」の詳細はこちら。
- 請求書の書き方・記載項目
請求書の書き方にルールはありませんが、記載すべき項目は慣例的に決まっています。請求書の記載項目のほか、請求書を作成する際の注意点などは、以下の記事で詳しく解説しています。
- 請求書の保管期間
請求書は取引の証拠となる証憑(しょうひょう)書類にあたり、一定期間の保存が義務付けられています。支払いが終わったからといって破棄することはできず、決められた期間は保管しておかなければいけません。また、請求書の保管期間は、法人か個人事業主かによって異なります。請求書の保管期間や管理方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
- 請求書の管理方法・効率化
請求書は従来、Excelなどで作成したものをプリントアウトして郵送するのが常識でしたが、スマートな請求書管理をおこなうため、最近では、PDF化した電子請求書をメールなどでやり取りする企業が増えています。請求書の管理方法や請求書作成を効率化する方法などは、以下の記事で詳しく解説しています。
原則として、請求書に収入印紙を貼る必要はありません。ただし、請求書に代金の受け取りを示す記載があるなど領収書としての性質を兼ね備えている場合は、印紙税法上の課税文書に該当するため収入印紙が必要になります。
このように、印紙税法における課税文書は規定が細かいうえに例外もたくさんあります。文書の処理をおこなうたびに、「この文書は課税文書なのか?」「いくらの収入印紙を貼ればいいのか?」といったことを気にしたり調べたりするのは極めて非効率です。このような無駄をなくしたいなら、ぜひシステム導入による課税文書の電子化をご検討ください。収入印紙代の節約だけにとどまらない、大きな効果をもたらしてくれるはずです。